パプアニューギニア「マエササ」:コーヒーが国をつくる 真夏のプールサイドのオレンジカクテル〜2024年8月限定コーヒー

1930年代から続く、パプアニューギニアのコーヒー物語

パプアニューギニアのコーヒー栽培は、1930年代にヨーロッパの宣教師がジャマイカからブルーマウンテン種の苗木を持ち込んだことから始まりました。1950年代に入ると本格的な栽培が始まり、シグリなどのブランドが誕生。1975年のオーストラリアからの独立後、独自の栽培技術を確立し、世界的に注目される産地へと成長を遂げました。

コーヒー産業の成長が原動力に

1975年の独立は、パプアニューギニアのコーヒー産業に大きな転機をもたらしました。コーヒーは、単なる農産物ではなく、国の経済を支え、国民の生活水準向上に貢献する重要な産業へと成長しました。

特に、今回のコーヒー産地でもある東部高地州のカイナントゥ地区では、独立前からコーヒー栽培が盛んになり、住民たちの経済的自立を支えました。コーヒーから得られる収入は、道路や学校、医療施設などのインフラ整備に充てられ、地域社会の発展に貢献しました。コーヒーは、単なる農産物ではなく、地域住民の生活を支え、コミュニティを活性化する力強い存在となったのです。

カイナントゥ地区ウスルファ:自然が育む極上のコーヒー

カイナントゥ地区ウスルファ地域は、標高約1,800メートルの高地に位置し、昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。また、火山灰を含む肥沃な土壌がコーヒー栽培に最適な環境を作り出しています。

  • 標高の高さ: 高地でゆっくりと熟成したコーヒーチェリーは、豊かな風味と複雑な味わいを生み出します。
  • 昼夜の寒暖差: 昼夜の温度差が大きいことで、コーヒー豆の糖度が高まり、甘みが際立ちます。
  • 火山灰土壌: ミネラル豊富な火山灰土壌は、コーヒー豆に独特の風味を与えます。

これらの自然条件が織りなすウスルファ産のコーヒーは、柑橘系の爽やかな酸味と豊かなコク、そしてフローラルやスパイスのような香りが特徴です。まるでジャングルの香りが口いっぱいに広がるような、複雑で奥深い味わいが魅力です。

ウスルファ産コーヒーの品種:ティピカ種とブルボン種

ウスルファ地域で主に栽培されているのは、ティピカ種とブルボン種です。ティピカ種は、アラビカ種の中でも最も古い品種の一つで、繊細な酸味と上品な香りが特徴です。ブルボン種は、ティピカ種の変種で、果実味が豊かで、コクのある味わいが特徴です。これらの品種が、ウスルファ産コーヒーの多様な風味を生み出しています。

パプアニューギニアのコーヒー文化

パプアニューギニアでは、コーヒーは単なる飲み物ではなく、人々の生活に深く根ざした文化として存在しています。コーヒーを飲みながら談笑する習慣は、地域社会の絆を深める上で重要な役割を果たしています。また、コーヒー豆の収穫祭やコーヒー品評会など、コーヒーに関連した様々なイベントが開催されており、コーヒー文化はますます発展しています。

パプアニューギニア・カイナントゥ地区ウスルファ産コーヒーは、豊かな自然と人々の努力によって生み出される、世界が認める高品質なコーヒーです。その複雑で深みのある味わいは、コーヒー愛好家を魅了し続けており、パプアニューギニアの独立を支えた礎の一つとして、その価値は今後もますます高まっていくことでしょう。

味について

真夏のプールに浮かぶ色とりどりの浮き輪のようなビビッドな酸味がファーストインパクト、砂浜で足を繰り返す波のように苦味がじんわりと届いてくる。フレーバーはプールサイドのオレンジカクテルのようにジューシーに、グラスに添えたカカオの組み合わせが酸味をまろやかに。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:オレンジ、カカオ、レモン

農園データ

生産国パプアニューギニア
標高1800〜1950
品種ティピカ、アルーシャ、ブルボン
精選ウォッシュド

世界で一番新しい国のコーヒー 宣教師とSHOGUN〜東ティモール レテフォホ(2024年5月限定コーヒー)

世界でいちばん新しい国

東ティモール地図

外務省HPより

 インドネシアの東、ティモール島の東部にその国はあります。

人口は 約134万人(2022年)、国土は日本の岩手県ほどの大きさで、地形は山々が連なっています。

東ティモール風景

photo by United Nations Photo CC

その地は、1586年からポルトガルの植民地でした。1974年にインドネシアが東ティモールを支配しました。1999年からの独立運動を経て、様々な激しい争いを経た上に、2002年5月20日に独立しました。

宗教は99%がキリスト教です。インドネシアの90%はイスラム教ですので、住民の背景が異なることがわかります。

カトリック教会とSHOGUN

 東ティモールに最初に訪れたのは、ポルトガルのカトリック教会です。1515年から宣教活動を始めたと言われます。

カトリック教会と言えば、日本の宣教師フランシスコ・ザビエルのイエズス会が有名ですね。ザビエルもポルトガル国王の命を受けて日本にやってきたのです。

カトリック教会や宣教師による東アジアでの布教活動と、宗教の権力が、政治、経済に深く繋がっている様子は、最近話題の真田広之主演のディズニードラマ「SHOGUN」にて、非常に興味深く描かれています。

ザビエルを始めとしたカトリック宣教師達、そして、ポルトガルがなぜ日本の歴史の重要な場面で登場するのか、その一端を感じることができるでしょう。

Screenshot

SHOGUNサイト

話は逸れましたが、そう、東ティモールは誕生してまだ22年の新しい国です。

東ティモールでは、石油産業が中心で、実産業として、コーヒーは唯一の輸出産業であり、国民の4人に1人がコーヒー生産者と言われています。

実は、東ティモールのコーヒー産業には、日本は深い関わりあります。

日本によるコーヒー支援

 2003年、まだ日本のNPO法人が 東ティモール復興のため、コーヒー生産者支援を始めました。

当初35世帯だった農家は、現在約600世帯に増えました。

「品質管理」という概念を伝え、チェリーの選別、乾燥、精選工程にいたるまで、指導を重ねてきました。

長年にわたる努力が実り、高品質コーヒーができるようになりました。

東ティモールコーヒー豆

photo by United Nations Photo CC

※上記掲載の写真は本コーヒー農園とは関係ありません。

 その東ティモールから届けられた「レテフォホ」です。

口当たり柔らかく、優しい酸味、広がる香ばし、落ち着いたコク

口の中で柑橘のほんのりとした酸っぱさとカカオの甘みがふくよかに広がります。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

フレーバー:カカオ、オレンジ、シガー

農園データ

生産国東ティモール
生産地域レテフォホ、ゴウロロ
品種ティピカ
標高1,500m
精製ウォッシュド

ガブリエルが運んだティピカ〜完熟豆の甘味〜ドミニカ シルベストレナチュラルティピカ(2024年4月限定コーヒー)

カブリエルとティピカの苗

 彼の名はガブリエル・ド・クリュー

ガブリエルは大西洋の上を何日も彷徨っていた。

目的地はカリブ海に浮かぶ美しい島、マルティニーク島、

カブリエルは、そこにコーヒーの苗を持ち込むため航海を続けていた。

ベタ凪が何日も続き、ガブリエルの船は大海原に漂流していた。

食料や水もだんだん底を着き始め、せっかく持ち込んだコーヒーの苗も、一つ二つと萎れていき、生きているのは、後一つとなってしまった。

ガブリエルの自身の飲み水も僅かとなり、もはや絶望だけが残っていました。

これまでと思うと、視界に入ったコーヒーの最後の苗木、最後の飲み水の一滴を、ふと、その最後その苗に与えました。

すると、今までの凪が嘘のように風が吹き始め、帆が勢いよく膨らみ、進み始めました。

そして、ガブリエルの視界には、マルティニーク島が現れたのです。

最後の1本のコーヒーの苗とともに上陸しました。そのコーヒーの種はティピカ。さらにこの数年後の1735年、ティピカはドミニカに持ち込まれました。

コロンブスのイスパニョーラ島

 美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。

バオルコ山脈が生み出すアロマ

 ドミニカ南西部に位置するバラオナ地方のバオルコ山脈は、石灰岩質の地盤を腐葉土が覆った土壌。山の斜面が雲で覆われることにより年間を通じて、まんべんなく雨を降らせます。

この雲が強い日差しからコーヒーの木を守り、表土に湿りを与え、コーヒーの木は育ちます。カリブ独特の軽い口当たりと柔らかな酸味と甘み、果実感のある香ばしいアロマが特徴です。

農家の小農園で、ほぼ野生(シルベストレ)に近い状態ながらも上質なコーヒーを生産しています。

ハニーナチュラルの熟成

Screenshot

 コーヒーチェリーが完熟した豆を手摘みし、ミューシレージ(粘液質)残して天日乾燥させるハニープロセス(ワイニープロセス)でコーヒー豆になります。

コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニー・ワイニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

ハニーやワイニー呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味や熟成したワインのような甘味が出るためと言われています。

熟成された甘味 ラズベリー&チョコレート

 強いラズベリーと、オレンジの甘い香りが鼻を突き抜けていきます。

余韻にはチョコレート。

しっかりとコクが感じられ、酸味や苦みはほとんどありません。

甘ったるさは決してなく、単一ティピカらしく雑味なく、すっきりと。

ハニープロセスでチェリーの甘みが沁み込み、ベリー&チョコの甘味の余韻がとても長く感じられます。

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★★

フレーバー:ラズベリー、オレンジ、カカオ

農園データ

生産国ドミニカ
生産地域バラオナ州 バオルコ山脈
品種品種ティピカ
標高800〜1,500m
精製パルプドナチュラル

シェードツリーに守られて〜ドミニカ エバノヴェルデ(2023年9月)

コロンブスのイスパニョーラ島

 美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。

 ドミニカでは、ガブリエル・ド・クリューの伝説という、ドミニカのコーヒーの原種であるティピカの苗木がもたらされた物語があります。詳しくは、ドミニカ バラオナAA〜ガブリエルの一滴の水伝説をご覧ください。

シェードツリーに守られたコーヒー

 EBANO VERDE(エバノ ヴェルデ)は、コンスタンサ地方にある品質にこだわる16の小規模農園によって生産されました。農薬の使用を最小限にし、環境保護と土地の保全を目指した伝統的なシェード栽培を行っています。

シェードツリーによる自然が作り出す日陰がコーヒーツリーを高温と乾燥から防いてくれるのです。また、バナナやイモの木などで構成されるシェードツリーは、多様な生物を育み、森林や土壌の生態系を保全してくれるのです。

エバノヴェルデの出荷プロセスをご紹介します。


①成熟したコーヒーチェリーのみをハンドピック
②エコパルピング~洗浄
 (キロ当たり5リットル以下の水量使用)
③天日乾燥3~5日 水分11%
 その後3~4週間保管
④パーチメント除去、色選別
⑤ラボでの徹底した品質管理
 SCAA規準に基づくカッピング

豆をかじったような香ばしさ

しっかりと感じる豆の香ばしさ、苦味や酸味はほとんど感じられませんが、

香り高さと、厚みのあるコクが飲みごたえを作ってくれています。

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:焼き芋、黒糖

農園データ

生産国ドミニカ共和国
生産地域コンスタンサ
生産高度1,800〜2,200m
精選方法ウォッシュド
品種カトゥーラ、カツアイ

アマゾン川と呼ばれるコーヒー〜アマゾナスG1(2023年8月)

アマゾン川と呼ばれた地

 ペルー、アマゾナス県のコーヒーです。「Amazonas」と聞いて、まず浮かぶのはアマゾン川ですね。南米にある世界最大・最長の川です。アマゾン川のスペイン語表記は「Rio Amazonas」で、まさにアマゾン川を抱くという場所です。

ペルーにおけるコーヒーの始まりは、1700年代のスペイン植民地時代です。現在においても当時伝来された在来種ティピカが輸出される品種の70%以上となっています。

さらに、ペルーは世界でも有数のオーガニック認証やフェアトレード認証のコーヒー豆の輸出国でもあります。アマゾナス県はペルー北部アンデス山脈中に位置し、ペルーの高品質コーヒーの重要産地となっています。

ペルーのコーヒーの歴史はこちらの記事(ペルー ベラスコ将軍とはじまりのティピカ)をご覧ください。

レモンの酸味、そこはかとなく

 しっかりと感じる酸味、しかし、その後には舌に刺激が残りません。

酸味と一緒に感じる甘味が果実味を感じさせ、苦味もありません。

ほんのり漂うレモンの香りがさらに夏らしいすっきりさを作り出してくれます。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:レモン、ウッド、青草

農園データ

生産国ペルー
生産地域アマゾナス県
生産高度1,500m
精選方法ウォッシュド
品種ティピカ、カティモール、パチェ

赤道直下、アンデス火山から届いたアンバランスさと瑞々しさ〜エクアドルSHBチト(2023年7月)

赤道という名の国

 エクアドルのコーヒーについて少し紹介しましょう。「エクアドル」とは実は、スペイン語で「赤道」という意味で、その名の通り赤道直下に位置している国です。アンデス山脈が国土を通り、大部分が山岳地帯に覆われています。赤道の熱帯地域と、アンデス山脈の火山灰土壌がコーヒー生産にとっても非常に適した場所であることがわかります。

 エクアドルは、15世紀には、インカ帝国に支配下にあり、1526年スペインのフランシスコ・ピサロの侵攻二よりスペイン植民地となりましたが、1830年に独立しました。エクアドルには、独特の進化をする動植物の宝庫と言われるガラパゴス諸島があります。

フランスの探検隊が持ち込んだブルボン

 エクアドルのコーヒー豆の歴史についてですが、最初にコーヒーの木が持ち込まれたのは19世紀にフランスの探検家がブルボン種を持ち込んだと言われています。火山灰質の土壌、アンデス山脈の高山地帯で寒暖差が大きいなど、コーヒー豆の栽培に適しており、コーヒー豆栽培は産業の中心となりました。

エクアドルは、量産品であるインスタントコーヒー用豆の一大産地でもあり、インスタントコーヒーの原料に使われているロブスタ種の栽培も行っており、その比率はアラビカ種6割に対してロブスタ種が4割となっています。

希少品種ティピカ・メホラード

 エクアドルのコーヒー生産地としては、アラビカ種のコーヒー豆を国内で一番多く生産している沿岸部のマナビ地方、生産量は国内の約50%を占めていて、標高200〜700mの低いエリアで大量生産を実現しています。次が、内陸の南部にあるロハ地方で、国内の約20%がここで栽培されています。栽培地の標高は1000m~2000mと栽培には最も適した高さです。そのため品質が高く、ロハ地方のコーヒーはコーヒー品評会にも多く登場しています。

今回のコーヒーは、チトはロハからさらに南へいったエクアドル最南端にあります。標高1500m、良質な土壌と気候に恵まれ、近年は、スペシャリティコーヒーの生産を増やしていくことを目指しています。

先月ご提供したたボリビアコーヒー「ビオ・アラビカ」もアンデス山脈のコーヒーでしたね。

今回のコーヒーの品種はティピカ・メホラードです。ブルボン種と、エチオピア原種を交配したものと判明しており、非常に珍しい

アンバランスさから溢れる瑞々しさ

 口に含んだ瞬間から柑橘の酸味が強く現れます。しかし、同時に甘味も隠れていて、まろかやさで包まれます。余韻には青みのある渋さが残り、ここは好き嫌いがありそうです。まだ、全体的に、アンバランスさがありつつも、瑞々しさとビビッドな風味は特徴的で面白いです。将来に期待したいポテンシャルを感じます。

苦味 ★★☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:レモン、青草、鉄、焼き芋

農園データ

生産国エクアドル
生産地域サモラ・チンチペ県チト地区
生産高度1,543m
精選方法ウォッシュド
収穫時期

年のはじまり、農のはじまり、はじまりのコーヒー〜パプアニューギニア ハイランドスウィート(2023年1月)

年の始まり 農業が生まれた地から

新年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い致します。さて、2023年1月の限定コーヒーは、パプアニューギニアから「ハイランドスウィート」です。

パプアニューギニアは太平洋の島国です。日本からはるか南に、オーストラリアの北の赤道付近にあります。

もともとは、ニューギニア島という世界で2番目に大きな島があり、その島の東半分がパプアニューギニアで、西半分はインドネシアとなっています。

パプアニューギニアのコーヒーの歴史は浅く、1930年代にヨーロッパ人の宣教師によって、ジャマイカの有名なコーヒー品種である、「ブルーマウンテン」の苗木が移植されたことが本格的なコーヒー栽培のきっかけとなっています。

一方で、パプアニューギニアは、世界で最も初期に、農業を始めたとも言われています。その証拠となっているのが世界遺産に登録されている「クックの初期農耕遺跡」です。詳細はこちらの記事をご覧ください。

甘さが追いかけてくる

飲んでみてまず感じる苦味、スイートと名付けられた割に苦いのだなと思った瞬間、

甘味が後から追いかけてきます。余韻には、舌を優しく刺激する酸味の上にも甘さが転がります。

もう少しコクがあれば、全体の味が引き締まってバランスの良い風味になったかなと思いました。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★☆

コク ★☆☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★☆☆  

フレーバー:青草、メープル

パプアニューギニア〜7000年前、世界で初めて農業が生まれた場所

2022年5月の限定コーヒーは、パプアニューギニアから「グレード Y1」です。

パプアニューギニアは太平洋の島国です。日本からはるか南に、オーストラリアの北の赤道付近にあります。

もともとは、ニューギニア島という世界で2番目に大きな島があり、その島の東半分がパプアニューギニアで、西半分はインドネシアとなっています。

パプアニューギニアのコーヒーの歴史は浅く、1930年代にヨーロッパ人の宣教師によって、ジャマイカの有名なコーヒー品種である、「ブルーマウンテン」の苗木が移植されたことが本格的なコーヒー栽培のきっかけとなっています。

一方で、パプアニューギニアは、世界で最も初期に、農業を始めたとも言われています。その証拠となっているのが世界遺産に登録されている「クックの初期農耕遺跡」です。

パプアニューギニア南部の海抜1500m地点の湿地帯にある、ニューギニア島最古の農耕地であり、発掘調査では、少なくとも7000年前から耕作が行われてきたことが判明しています。

タロイモやヤムイモなどの生産活動が、開始以来一度も途絶えていない場所でもあります。約6500年前に植物採集が農業へと変わったこの場所では、初めは単なる盛り土をして耕作していました。

しかし、やがて木製の道具で溝を掘って湿地を干拓し、4000年前にはバナナの栽培も始まったことが考古学的に証明されています。これほどの長期にわたり、独自の農業の発展や農法の変化について考古学的な裏付けのある場所は、世界にも類がないのです。

写真は世界遺産公式サイトの記事より。

本コーヒーの名前である「グレード Y1」とは、グレード規格となっていて、大規模農園規格であるAA、A・・・と、小規模農園であるPSC、Y1、Y2などがありますが、Y1は小農家グレードとなっています。

何度も味わいたくなる旨味のあるコーヒーです。

果実感のある酸味は、甘味と絡んでいて嫌味がなく、きゅっと引き締まっています。

しっかりとコクがあり、香り高いです。

余韻には、豆の香ばしさがしばらく続きます。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー: オレンジ 黒糖 レモングラス

ペルー ホワイトコンドル〜ベラスコ将軍とはじまりのティピカ

2022年4月限定コーヒーはからペルーより「ホワイトコンドル」です。

ペルーは、南米西部に位置し、エクアドル、コロンビア、ブラジル、ボリビア、チリの5ヶ国に隣接しています。

ペルーにおけるコーヒーの始まりは、1700年代のスペイン植民地時代です。現在においても当時伝来された在来種ティピカが輸出される品種の70%以上となっています。

さらに、ペルーは世界でも有数のオーガニック認証やフェアトレード認証のコーヒー豆の輸出国でもあります。

ペルーのコーヒー産業における歴史的転機は、1968年のペルー革命に遡ります。ベラスコ将軍による、「反米と自主独立」を掲げた軍事革命です。

貧しい生まれだったベラスコ将軍において、革命の最大の柱は、農地改革でした。

「44家族」と呼ばれていたいわゆる寡頭支配層は、解体され、小作人に分け与えられたのです。ベラスコ将軍は先住民をカンペシーノ(農民)と呼ぶようにし、これまでの慣習であった侮蔑的な響きのあるインディオという言葉も廃止されました。

ペルーのコーヒー農園は現在も90%が小規模農家となっています。

ホワイトコンドルは、バナナやアボカドなどのシェードツリーのもとで栽培されています。

収穫は全て丁寧に手摘みし、天日干しされ、電子選別後、ハンドピックを行うことで、高品質のコーヒーに仕上がります。栄えあるコーヒー・オブ・ザ・イヤー 2021のひとつにも選ばれました。

一口飲むと、豆の香ばしさをしっかり感じることができます。

バランスに優れ、飲み終わった後に広がる香りが優雅な余韻を残してくれます。

果実感の酸味も心地よいです。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:カカオ、ナッツ

ドミニカ バラオナAA〜ガブリエルの一滴の水伝説

2022年3月限定コーヒーはからドミニカ共和国より「ドミニカ バラオナAA」です。

彼の名はガブリエル・ド・クリュー

ガブリエルは大西洋の上を何日も彷徨っていた。

目的地はカリブ海に浮かぶ美しい島、マルティニーク島、

カブリエルは、そこにコーヒーの苗を持ち込むため航海を続けていた。

ベタ凪が何日も続き、ガブリエルの船は大海原に漂流していた。

食料や水もだんだん底を着き始め、せっかく持ち込んだコーヒーの苗も、一つ二つと萎れていき、生きているのは、後一つとなってしまった。

ガブリエルの自身の飲み水も僅かとなり、もはや絶望だけが残っていました。

これまでと思うと、視界に入ったコーヒーの最後の苗木、最後の飲み水の一滴を、ふと、その最後その苗に与えました。

すると、今までの凪が嘘のように風が吹き始め、帆が勢いよく膨らみ、進み始めました。

そして、ガブリエルの視界には、マルティニーク島が現れたのです。

最後の1本のコーヒーの苗とともに上陸しました。そのコーヒーの種はティピカ。さらにこの数年後の1735年、ティピカはドミニカに持ち込まれました。

美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。


ドミニカ南西部に位置するバラオナ地方のバオルコ山脈は、石灰岩質の地盤を腐葉土が覆った土壌。山の斜面が雲で覆われることにより年間を通じて、まんべんなく雨を降らせます。

この雲が強い日差しからコーヒーの木を守り、表土に湿りを与え、コーヒーの木は育ちます。カリブ独特の軽い口当たりと柔らかな酸味と甘み、果実感のある香ばしいアロマが特徴です。

南国の果実をそのままかじったようなジューシーさと、心地よい酸味感

水っぽさやフレーバーの曖昧さも、異国情緒の中でむしろごくごくと飲みたくなる

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:カカオ、ライム、とうもろこし