エルサルバドルの黄金地帯に位置するアグアカリエンテ農園:伝統と革新が生む上質なコーヒー〜2024年7月限定コーヒー

エルサルバドルとは?

 エルサルバドルは、中米七カ国の中で最も小さい国で、その面積は九州の約半分と同じくらいです。グアテマラとホンジュラスの間に位置し、火山や湖が点在しています。サトウキビやコーヒーなどの農業と輸出が主な産業となっています。

Googlemapより

「幸せと悲しみの果実」エルサルバドルコーヒーの歴史

 エルサルバドルコーヒーは、その複雑な味わいと豊かな歴史で知られるスペシャルティコーヒーです。しかし、その歴史は決して平坦なものではありませんでした。

19世紀前半にグアテマラから持ち込まれたコーヒーは、エルサルバドル経済の重要な柱となりました。しかし、1930年代の世界恐慌による価格暴落は、貧困にあえぐ農民たちの不満を爆発させ、1932年には大規模な農民蜂起(La Matanza)を引き起こしました。この悲劇的な事件では、約3万人の命が失われたと言われています。

その後、コーヒー生産は衰退しましたが、1970年代以降、ヨーロッパ移民による再興と、「14家族(Catorce Familias)」と呼ばれる寡頭支配層の登場によって再び発展を遂げました。彼らは高品質なコーヒー豆の生産に注力し、エルサルバドルコーヒーを世界中に知らしめました。

しかし、この繁栄の陰には、大きな格差が存在しました。「14家族」は莫大な富を手にし、多くの農地を支配しました。一方、農村部の小規模生産者は、低賃金で劣悪な労働環境に苦しむ労働者となりました。こうした支配層との格差が、1980年代に勃発したエルサルバドル内戦の引き金となりました。

聖職者を中心とした農民解放を掲げる左派ゲリラ「ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)」と、「14家族」の資金援助を受けた右派政府軍との間で争われたこの内戦は、12年間にも及び、約7万5千人の犠牲者を出す悲惨な結果となりました。しかし、1992年に国連の仲介で和平合意が成立し、ようやく長い戦いに終止符が打たれました。

内戦終結後の新たな希望

 内戦終結後、エルサルバドルコーヒー産業は新たな道を歩み始めました。民主主義の確立と農地改革によって、小規模農家もコーヒー生産に参入できるようになり、品質向上のための取り組みも活発化しました。

現在、エルサルバドルコーヒーは、複雑な味わいが楽しめるスペシャルティコーヒーとして世界中で評価されています。

エルサルバドルコーヒーの品種と土壌

 エルサルバドルコーヒーには、ブルボン種、アラビカ種、マラゴジッペ種など様々な品種があります。ブルボン種はエルサルバドルコーヒーの代表的な品種であり、フルーティーな香りとまろやかな酸味が特徴です。近年では、高品質なマラゴジッペ種の栽培も盛んになっています。

エルサルバドルの土壌は、火山灰由来のミネラル豊富な火山性土壌です。この土壌は、コーヒーの木の生育に適しており、良質なコーヒー豆の生産に貢献しています。

アグアカリエンテ農園:伝統と革新の融合

 エルサルバドル西部のアタコ地区に位置するアグアカリエンテ農園は、親子三代続く歴史ある農園です。涼しい平均気温、豊富な降雨量、良質な火山性土壌は、コーヒー栽培に最適な環境を提供しています。

この農園の特徴は、伝統的な水洗処理に加え、農園内に湧き出る冷たいためぐみ豊富な湧き水を利用した発酵処理を行っていること。このユニークな処理方法は、クリアな味わいと上品な酸味を生み出すと言われています。

アグアカリエンテ農園では、収穫されたコーヒー豆を丁寧に選別し、天日乾燥させています。また、最新の設備を導入し、品質管理にも力を入れています。こうした伝統と革新の融合が、高品質なアグアカリエンテコーヒーを生み出すのです。

味について

 暖炉にくべた薪が崩れてカランと鳴るようなまろやかさに包まれます。炭の香りがさらに心身をリラックスさせてくれます。余韻には爽やかな桃の香りが漂います。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:炭、桃の皮

農園データ

生産国エルサルバドル
標高
品種ブルボン、パカス
精選天日乾燥

苦難を乗り越え、世界を魅了する希少なスペシャルティコーヒー〜ルワンダ スカイヒル(2024年6月限定コーヒー)

はじめに

 今月のコーヒーはアフリカ、ルワンダからです。ルワンダは、その美しい景観と豊かな文化だけでなく、近年では高品質のコーヒーの生産地としても注目されています。ルワンダコーヒーは独特の風味と高い品質で、世界中のコーヒー愛好家を魅了しています。ルワンダコーヒーの歴史やその特徴から紹介させてください。

ルワンダコーヒーの歴史

コーヒー栽培の始まり

 ルワンダにコーヒーが導入されたのは、1900年代初頭のドイツ植民地時代です。その後、ベルギーの統治下でコーヒー生産が義務付けられ、コーヒー産業の基盤が築かれました。

ジェノサイドとコーヒー産業への影響

 1994年のルワンダジェノサイドは、国全体に壊滅的な影響を及ぼし、コーヒー産業も大打撃を受けました。この悲劇的な出来事で多くの農園が荒廃し、生産量が大幅に減少しました。この時期を描いた映画「ホテルルワンダ」は、ジェノサイドの恐怖と混乱をリアルに描写し、多くの命を救ったポール・ルセサバギナの勇気ある行動を描いています。

復興と品質改善への取り組み

 ジェノサイド後、ルワンダ政府と国際支援機関はコーヒー産業の復興に向けた取り組みを開始しました。特に品質改善に注力し、農家への教育やインフラの整備が進められました。この結果、ルワンダコーヒーは徐々に国際市場で高く評価されるようになりました。

ルワンダコーヒーの特徴

テロワールと風味

 ルワンダは高地で肥沃な火山灰土壌を持つ地域が多く、これがコーヒー豆に独特の風味を与えます。ルワンダコーヒーは、柑橘系の明るい酸味とベリーのようなフルーティーな香りが特徴です。

スペシャルティコーヒーとしての位置付け

 ルワンダのコーヒーは、スペシャルティコーヒー市場でも高く評価されています。カッピングスコアで高得点を獲得し、国際的なコーヒーコンペティションでも入賞することが増えています。

苦難を乗り越えた成功の裏側

農家の努力と国際協力

 ルワンダのコーヒー産業の成功は、農家一人ひとりの努力と国際的な協力の賜物です。フェアトレードやダイレクトトレードを通じて、農家は適正な価格でコーヒーを販売できるようになり、生活の向上にも寄与しています。

女性の役割

 ルワンダでは、女性がコーヒー生産に大きく貢献しています。ジェノサイド後、多くの男性が亡くなり、女性が家庭を支える役割を担うようになりました。現在では、女性が主導するコーヒー協同組合も多く、品質向上と地域社会の発展に寄与しています。

コーヒーとルワンダの文化

 ルワンダでは、コーヒーは単なる産業作物ではなく、文化やコミュニティの一部です。コーヒーの栽培や収穫、加工の過程には、多くの家族や地域社会が関わっており、これがルワンダの社会的繋がりを強化しています。また、コーヒーの収入は教育や医療などの社会的サービスの向上にも寄与しています。

世界を魅了する希少なルワンダコーヒー

国際的な評価

 ルワンダコーヒーは、数々の国際的な賞を受賞しており、その希少性と品質の高さが認められています。特に、Cup of Excellenceなどの競技会では、ルワンダのコーヒーが毎年上位にランクインしています。

未来への展望

 ルワンダコーヒーは、これからも品質向上を続け、世界中のコーヒー愛好家を魅了し続けることでしょう。持続可能な農業と品質管理を重視することで、さらなる発展が期待されます。

ルワンダコーヒーは、過去の苦難を乗り越え、現在では世界中のコーヒー愛好家を魅了する希少なスペシャルティコーヒーとして知られています。美しい風味と品質の高さは、農家の努力と国際的な支援の賜物です。これからもルワンダコーヒーの発展と成功を見守りたいと思います。

コーヒーの味

 香り高く、コク深い。酸味の余韻が心地よい。梨やリンゴの青い酸味感を強く感じながらも、ジューシーな口当たりと甘みが、爽やかにバランスよく受け止めています。

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

フレーバー:梨、レモン

農園データ

生産国ルワンダ
生産地域
品種ブルボン
標高1,700〜1,900m
精製ウォッシュド、天日乾燥

世界で一番新しい国のコーヒー 宣教師とSHOGUN〜東ティモール レテフォホ(2024年5月限定コーヒー)

世界でいちばん新しい国

東ティモール地図

外務省HPより

 インドネシアの東、ティモール島の東部にその国はあります。

人口は 約134万人(2022年)、国土は日本の岩手県ほどの大きさで、地形は山々が連なっています。

東ティモール風景

photo by United Nations Photo CC

その地は、1586年からポルトガルの植民地でした。1974年にインドネシアが東ティモールを支配しました。1999年からの独立運動を経て、様々な激しい争いを経た上に、2002年5月20日に独立しました。

宗教は99%がキリスト教です。インドネシアの90%はイスラム教ですので、住民の背景が異なることがわかります。

カトリック教会とSHOGUN

 東ティモールに最初に訪れたのは、ポルトガルのカトリック教会です。1515年から宣教活動を始めたと言われます。

カトリック教会と言えば、日本の宣教師フランシスコ・ザビエルのイエズス会が有名ですね。ザビエルもポルトガル国王の命を受けて日本にやってきたのです。

カトリック教会や宣教師による東アジアでの布教活動と、宗教の権力が、政治、経済に深く繋がっている様子は、最近話題の真田広之主演のディズニードラマ「SHOGUN」にて、非常に興味深く描かれています。

ザビエルを始めとしたカトリック宣教師達、そして、ポルトガルがなぜ日本の歴史の重要な場面で登場するのか、その一端を感じることができるでしょう。

Screenshot

SHOGUNサイト

話は逸れましたが、そう、東ティモールは誕生してまだ22年の新しい国です。

東ティモールでは、石油産業が中心で、実産業として、コーヒーは唯一の輸出産業であり、国民の4人に1人がコーヒー生産者と言われています。

実は、東ティモールのコーヒー産業には、日本は深い関わりあります。

日本によるコーヒー支援

 2003年、まだ日本のNPO法人が 東ティモール復興のため、コーヒー生産者支援を始めました。

当初35世帯だった農家は、現在約600世帯に増えました。

「品質管理」という概念を伝え、チェリーの選別、乾燥、精選工程にいたるまで、指導を重ねてきました。

長年にわたる努力が実り、高品質コーヒーができるようになりました。

東ティモールコーヒー豆

photo by United Nations Photo CC

※上記掲載の写真は本コーヒー農園とは関係ありません。

 その東ティモールから届けられた「レテフォホ」です。

口当たり柔らかく、優しい酸味、広がる香ばし、落ち着いたコク

口の中で柑橘のほんのりとした酸っぱさとカカオの甘みがふくよかに広がります。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

フレーバー:カカオ、オレンジ、シガー

農園データ

生産国東ティモール
生産地域レテフォホ、ゴウロロ
品種ティピカ
標高1,500m
精製ウォッシュド

ガブリエルが運んだティピカ〜完熟豆の甘味〜ドミニカ シルベストレナチュラルティピカ(2024年4月限定コーヒー)

カブリエルとティピカの苗

 彼の名はガブリエル・ド・クリュー

ガブリエルは大西洋の上を何日も彷徨っていた。

目的地はカリブ海に浮かぶ美しい島、マルティニーク島、

カブリエルは、そこにコーヒーの苗を持ち込むため航海を続けていた。

ベタ凪が何日も続き、ガブリエルの船は大海原に漂流していた。

食料や水もだんだん底を着き始め、せっかく持ち込んだコーヒーの苗も、一つ二つと萎れていき、生きているのは、後一つとなってしまった。

ガブリエルの自身の飲み水も僅かとなり、もはや絶望だけが残っていました。

これまでと思うと、視界に入ったコーヒーの最後の苗木、最後の飲み水の一滴を、ふと、その最後その苗に与えました。

すると、今までの凪が嘘のように風が吹き始め、帆が勢いよく膨らみ、進み始めました。

そして、ガブリエルの視界には、マルティニーク島が現れたのです。

最後の1本のコーヒーの苗とともに上陸しました。そのコーヒーの種はティピカ。さらにこの数年後の1735年、ティピカはドミニカに持ち込まれました。

コロンブスのイスパニョーラ島

 美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。

バオルコ山脈が生み出すアロマ

 ドミニカ南西部に位置するバラオナ地方のバオルコ山脈は、石灰岩質の地盤を腐葉土が覆った土壌。山の斜面が雲で覆われることにより年間を通じて、まんべんなく雨を降らせます。

この雲が強い日差しからコーヒーの木を守り、表土に湿りを与え、コーヒーの木は育ちます。カリブ独特の軽い口当たりと柔らかな酸味と甘み、果実感のある香ばしいアロマが特徴です。

農家の小農園で、ほぼ野生(シルベストレ)に近い状態ながらも上質なコーヒーを生産しています。

ハニーナチュラルの熟成

Screenshot

 コーヒーチェリーが完熟した豆を手摘みし、ミューシレージ(粘液質)残して天日乾燥させるハニープロセス(ワイニープロセス)でコーヒー豆になります。

コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニー・ワイニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

ハニーやワイニー呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味や熟成したワインのような甘味が出るためと言われています。

熟成された甘味 ラズベリー&チョコレート

 強いラズベリーと、オレンジの甘い香りが鼻を突き抜けていきます。

余韻にはチョコレート。

しっかりとコクが感じられ、酸味や苦みはほとんどありません。

甘ったるさは決してなく、単一ティピカらしく雑味なく、すっきりと。

ハニープロセスでチェリーの甘みが沁み込み、ベリー&チョコの甘味の余韻がとても長く感じられます。

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★★

フレーバー:ラズベリー、オレンジ、カカオ

農園データ

生産国ドミニカ
生産地域バラオナ州 バオルコ山脈
品種品種ティピカ
標高800〜1,500m
精製パルプドナチュラル

ケニアのコーヒーはなぜ美味い?〜サファリ(2024年3月限定コーヒー)

ケニアってどこ?

 ケニアは東アフリカに位置する国で、東アフリカでも最も経済の発展しています。
東アフリカの金融中心地である首都ナイロビ、そして東アフリカ最大の港であるモンバサがあります。

ケニア地図

主要産業は農業で、特にコーヒー、紅茶が盛んです。「コーヒー」の始まりは、1893年、スコットランドの伝道師が農園を開拓したことに端を発し、長い歴史を持っています。

ケニアのコーヒーはなぜ美味い

 コーヒーの原種であるケニアのアラビカ種は、標高1,400〜2,000メートルの高地に見られる、火山性土壌で育てられます。

ケニアの平均気温は、19℃くらいで、雨は、一年を通じてほどよく降り、土壌は水はけの良い赤土のロームです。肥沃な赤い火山性土が斜面を厚く覆い、水はけの良い環境を作り出しています。

ほとんど全てのケニアコーヒーは水洗式精製法です。赤く熟した実のみを収穫し、収穫されたコーヒーチェリー(コーヒーの赤い実)は、加工する前に選別され、未熟、加熟、病害のある豆が取り除かれます。そして、加圧して、果肉除去をした後、コーヒー豆を乾燥台の上で天日干しにします。

ケニアコーヒーの生産は、種からコップに注がれるまでシステム的な要網に従っていて、苗床、農園、果肉除去、豆の破砕、格付けと全てが管理されています。

ケニアのサファリ

 本コーヒー「サファリ」は、毎年1万ロット以上のケニアコーヒーを鑑定する現地の専門家が、カップ評価をして厳選したコーヒーです。絶妙なバランスで産み出される、力強くも鮮やかなカップ品質です。

オレンジが突き抜ける

 カップに近づけた瞬間、シトラスの香り高さが鼻を伸びやかに突き抜けていきます。

口当たりはとても柔らかくなめらか。しっかりとコクも感じます。

甘味、酸味と全体バランスも良いです。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

フレーバー:オレンジ、木の皮、ナッツ

農園データ

生産国ケニア
生産地域キリンヤガ地区、キアンブ地区、ニエリ地区、ゴンゴマ地区、ケリチョ地区
品種SL28、SL34
標高1,750〜1,900m
精製ウォッシュド(水洗)

新店情報-栄にて2024年3月1日『西原珈琲店分店』開業します。

2024年3月1日に新店『西原珈琲店分店』が開業します。

場所は、栄Khave hane跡となります。店舗詳細はこちらをご確認ください。

2024年2月にて休店となりましたcafe Khaveの場所と歴史を受け継ぎ、西原珈琲店分店として新たな船出となります。栄エリアの西原珈琲店としては2店舗目となりますが、栄店と同様にお客様に永く愛される店となるよう営業して参ります。

2024年2月14日より『cafe Khave hane』はしばらくお休みとなります。

cafe Kahve haneは、2024年2月14日より休業とさせていただきます。

これまで栄、錦三丁目にてマリアージュフレールの紅茶と本格コーヒー、そして日替わりのこだわりのパスタをお楽しみ頂ける本格カフェとして、皆様にご愛用頂き、従業員一同、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

Khave hane跡は、2024年3月1日より西原珈琲店分店として、この場所と歴史を受け継ぎ新たな船出となります。西原珈琲店分店の詳細はこちらです。

メキシコのほうじ茶〜メキシコ クステペックSHG(2024年2月)

メキシコ、4大コーヒー生産地

 

 

 今回はメキシコのコーヒーです。メキシコのコーヒー生産は、実は、ブラジル、コロンビアに次ぐ中南米第3位の規模。生産は南部に集中しており、下の地図で囲った場所が主要生産地となっています。地図を見てみると、メキシコ南部から、ガテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカと、コーヒーの主要生産国が続いています。ちょうど、コーヒーベルトにあることに加え、火山灰豊富な山脈が続いていることもあると思います。

 主要生産地は、

チアパス州のタパチュラ

オアハカ州のオアハカ

プエブラ州のプエブラ

ベラクルス州のコアテペック

となっています。今回は、最南にあるガテマラと接するチアパス州です。

メキシコのコーヒー等級

メキシコではコーヒーの等級を以下の表にあるように、生産地の標高で分別しています。

SHGSTRIETHY HIGH GROWN/
ストリクトリー・ハイ・グロウン
標高約1700m以上
HGHIGH GROWN/
ハイ・グロウン
標高約1000m以上1700m未満
SDSTANDARD/
スタンダード
標高約1000m未満

今回のコーヒーも最高等級のSHGです。

ほうじ茶の香り ふわふわと

 ほうじ茶の香ばしさがほんのりと漂う。酸味しっかりと舌を刺激。重心は弱めで、柔らかくふわふわと、口当たりはフルーツティーのよう。春がふくよかにやってくる。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:ほうじ茶、レモン、炭

農園データ

生産国メキシコ
生産地域チアパス州
品種等級:SHG ストリクトリー・ハイ・グロウン

クチュマタネス山の風が運ぶ春の予感〜グァテマラ ウエウエテナンゴ トドサンテリタ(2024年1月)

新年初のコーヒーはグァテマラから

 2024年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い致します。なお、能登半島で発生した大地震により甚大な被害が発生し、犠牲となった方に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々がいち早く日常に戻ることをお祈りしております。

本年最初のコーヒーはグァテマラ共和国より、ウエウエテナテンゴです。

 グアテマラは、太平洋とカリブ海に面する亜熱帯型に位置します。国土の約70%が火山に囲まれた山岳地帯になっています。厳しい寒暖差や豊富な雨量、火山灰の土壌などコーヒー栽培には絶好の条件がそろっており、高い品質のコーヒー豆を生産しています。火山とコーヒーの関係についてはこちらの記事参照

グアテマラは18世紀中ごろにコーヒーが持ち込まれ、栽培が開始されたといわれています。グアテマラはスペシャルティコーヒーと呼ばれる高品質コーヒーを生産する主要な産地でもあります。世界最高峰のコーヒー品評会であるカップ・オブ・エクセレンスにも20年以上前から参画しています。コーヒー豆の輸出先はアメリカ・カナダに次いで日本が第3位です。

グアテマラでは独自の品質等級を設けています。標高が高くなるほど風味も豊かになり高品質とされ、等級は生産地の高度で7等級に分けられ、最高等級は標高1350m以上のSHB(ストリクトリーハードビーン)、1200~1350mはHB(ハードビーン)、以下SH(セミハードビーン)、EPW(エクストラプライムウォッシュド)、PW、EGW、GWとなります。

なお、今回のコーヒーも最高等級のSHBです。

クチュマタネス山地の風とコーヒー

 グァテマラの中でも良質の豆が生産されることで有名なウエウエテナンゴ地区は、グァテマラ北西を横断するクチュマタネス山地にあり、最大標高 4,000mの石灰岩山周辺にて、1870年からコーヒー栽培が始まっています。

グァテマラのコーヒー生産地域としては標高が最も高い地域に位置しており、クチュマタネス山地から吹き下ろされる冷たい風と、メキシコのテウアンテペック平原から吹き付ける乾燥した風のおかげで、2,000m近い標高があるにもかかわらず、霜害から守られ良質のコーヒー豆が栽培される地域となっています。寒暖の差が出来る高い標高と肥沃な台地は、まさにコーヒー栽培に適しているのです。

本コーヒーの生産農協である、トドサンテリタ農協では、収穫されたコーヒーを24時間自然発酵させた後に水洗、その後パティオで48時間〜60時間かけて乾燥させた伝統的なウォッシュドを採用しています。

専門チームによる土壌保全や浸食防止のための土地の段々畑化、剪定、有機堆肥を中心とした施肥と適切な散布を行うとともに、シャロームと呼ばれる木の導入によるシェードマネジメントを行うことで、コーヒーの品質向上を図っています。

梅が春を連れてくる

 コーヒーを蒸らす瞬間から、梅の甘酸っぱい香りが立ち上りました。口に含むと、舌に残らないクリーンな酸味が心地よく、控えめな甘味と相まってとてもバランスが良いです。飲み干した後の余韻には、ふたたび梅が漂い春の訪れを予感してくれるかのようです。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:梅、濡れた木、スモーク

農園データ

生産国ガテマラ
生産地域ウエウエテナンゴ県
生産高度1,350〜1,650m
精選方法ウォッシュド
品種規格:SHB EP
カツーラ(65%)、ブルボン、マルセレサ、ティピカ

華やかに過ぎゆくイヤーエンドコーヒー〜パプアニューギニア MORITA(2023年12月)

パプアニューギニアの農業とコーヒーふりかえり

 2023年も残すことあと僅かとなりました。今年最後となる限定コーヒーのご紹介となります。パプアニューギニア、イースタンハイランド州から『MORITA』です。思えば、今年の最初のコーヒーもパプアニューギニアの逸品でした。

 パプアニューギニアは太平洋の島国です。日本からはるか南に、オーストラリアの北の赤道付近にあります。

もともとは、ニューギニア島という世界で2番目に大きな島があり、その島の東半分がパプアニューギニアで、西半分はインドネシアとなっています。

パプアニューギニアは、世界で最も初期に、農業を始めたとも言われています。その証拠となっているのが世界遺産に登録されている「クックの初期農耕遺跡」です。

パプアニューギニア南部の海抜1500m地点の湿地帯にある、ニューギニア島最古の農耕地であり、発掘調査では、少なくとも7000年前から耕作が行われてきたことが判明しています。

タロイモやヤムイモなどの生産活動が、開始以来一度も途絶えていない場所でもあります。約6500年前に植物採集が農業へと変わったこの場所では、初めは単なる盛り土をして耕作していました。

しかし、やがて木製の道具で溝を掘って湿地を干拓し、4000年前にはバナナの栽培も始まったことが考古学的に証明されています。これほどの長期にわたり、独自の農業の発展や農法の変化について考古学的な裏付けのある場所は、世界にも類がないのです。

写真は世界遺産公式サイトの記事より。

精霊が降りたつ農園

 パプアニューギニアのコーヒーの歴史は浅く、1930年代にヨーロッパ人の宣教師によって、ジャマイカの有名なコーヒー品種である、「ブルーマウンテン」の苗木が移植されたことが本格的なコーヒー栽培のきっかけとなっています。

年間生産量の85%以上を零細農家が占めており、そのほとんどが標高1,500mを越える高地でアラビカを栽培しています。

そして、精霊の名前が由来となり名付けられたバロイダ農園。その中でも最も標高が高いエリアを 「MORITAエリア」と呼びます。

 農園主の名前は、ベン・コルブラン氏、1963年に栽培を始めてから少しずつ農園を広げていきました。1997年からは、ご子息のニコル氏が経営を引き継ぎ、地元の小農家と連携し、適正なロット管理を行い、手作業によるチェリー選別と高度な生産プロセスを通じて、世界でもトップレベルのコーヒーを届けています。

コーヒーが華やぐ

 レモングラスの滋味な香りと、フローラルが相まって、とても華やかな印象です。酸味もしっかりと感じられますが、舌に残らずコクを感じさせてくれる大変バランスの良い仕上がりです。飲み口は柔らかなく、抵抗なく最後の一口まで楽しむことができます。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:レモングラス、フローラル、ウッド

農園データ

生産国パプアニューギニア
生産地域イースタンハイランド州
生産高度1,700m
精選方法ウォッシュド
品種アルーシャ