ガブリエルが運んだティピカ〜完熟豆の甘味〜ドミニカ シルベストレナチュラルティピカ(2024年4月限定コーヒー)

カブリエルとティピカの苗

 彼の名はガブリエル・ド・クリュー

ガブリエルは大西洋の上を何日も彷徨っていた。

目的地はカリブ海に浮かぶ美しい島、マルティニーク島、

カブリエルは、そこにコーヒーの苗を持ち込むため航海を続けていた。

ベタ凪が何日も続き、ガブリエルの船は大海原に漂流していた。

食料や水もだんだん底を着き始め、せっかく持ち込んだコーヒーの苗も、一つ二つと萎れていき、生きているのは、後一つとなってしまった。

ガブリエルの自身の飲み水も僅かとなり、もはや絶望だけが残っていました。

これまでと思うと、視界に入ったコーヒーの最後の苗木、最後の飲み水の一滴を、ふと、その最後その苗に与えました。

すると、今までの凪が嘘のように風が吹き始め、帆が勢いよく膨らみ、進み始めました。

そして、ガブリエルの視界には、マルティニーク島が現れたのです。

最後の1本のコーヒーの苗とともに上陸しました。そのコーヒーの種はティピカ。さらにこの数年後の1735年、ティピカはドミニカに持ち込まれました。

コロンブスのイスパニョーラ島

 美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。

バオルコ山脈が生み出すアロマ

 ドミニカ南西部に位置するバラオナ地方のバオルコ山脈は、石灰岩質の地盤を腐葉土が覆った土壌。山の斜面が雲で覆われることにより年間を通じて、まんべんなく雨を降らせます。

この雲が強い日差しからコーヒーの木を守り、表土に湿りを与え、コーヒーの木は育ちます。カリブ独特の軽い口当たりと柔らかな酸味と甘み、果実感のある香ばしいアロマが特徴です。

農家の小農園で、ほぼ野生(シルベストレ)に近い状態ながらも上質なコーヒーを生産しています。

ハニーナチュラルの熟成

Screenshot

 コーヒーチェリーが完熟した豆を手摘みし、ミューシレージ(粘液質)残して天日乾燥させるハニープロセス(ワイニープロセス)でコーヒー豆になります。

コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニー・ワイニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

ハニーやワイニー呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味や熟成したワインのような甘味が出るためと言われています。

熟成された甘味 ラズベリー&チョコレート

 強いラズベリーと、オレンジの甘い香りが鼻を突き抜けていきます。

余韻にはチョコレート。

しっかりとコクが感じられ、酸味や苦みはほとんどありません。

甘ったるさは決してなく、単一ティピカらしく雑味なく、すっきりと。

ハニープロセスでチェリーの甘みが沁み込み、ベリー&チョコの甘味の余韻がとても長く感じられます。

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★★

フレーバー:ラズベリー、オレンジ、カカオ

農園データ

生産国ドミニカ
生産地域バラオナ州 バオルコ山脈
品種品種ティピカ
標高800〜1,500m
精製パルプドナチュラル

エルサルバドルの幸せと悲しみの果実〜2022年8月限定コーヒー

最近のこと

 8月も猛暑が続いています。38度を超えるような日もあり、外を歩くと息苦しさを覚えます。先日、私はインドネシアのジャカルタへ出張しましたが、日中の暑さは、日本と変わらないですが、朝や夕方の時間帯は、むしろ東南アジアのジャカルタの方が涼しいとすら感じました。

 学校は夏休み期間ですが、私の子供の頃、真夏でも外で思いっきり遊ぶ、ということは当たり前でしたが、こんなにも暑くなってしまった今日においては、真夏は室内の涼しいところで過ごす、というのが新たな常識となるのでしょうか。

 さて、8月限定コーヒーはエルサルバドルから、「SHGエルグァモブラックハニー」です。

エルサルバドルとは?

 エルサルバドルは、中米七カ国の中で最も小さい国で、その面積は九州の約半分と同じくらいです。グアテマラとホンジュラスの間に位置し、火山や湖が点在しています。サトウキビやコーヒーなどの農業と輸出が主な産業となっています。

Googlemapより

幸せと悲しみの果実〜コーヒーと内戦

 エルサルバドルのコーヒーは、「幸せと悲しみの果実」と言えるかもしれません。1880年代頃からコーヒーが主要な農作物になりましたが、1930年代の世界恐慌によってコーヒーの価格が暴落し、貧困に喘いだ農民の不満が爆発して、1932年に大規模な農民蜂起(La Matanza)が起こりました。約3万人の農民が亡くなったと言われています。

 その後、コーヒー生産は衰退しましたが、1970年代からヨーロッパ移民がコーヒー生産を再興し「14家族(Catorce Familias)」と呼ばれる寡頭支配層によって発展しました。彼らはコーヒー生産によって大きな富を得て、多くの農地を支配し、農村部の小規模生産者は労働者となりました。

 支配層との格差による不満が引き金となって、エルサルバドル内戦が発生しました。聖職者を中心とした農民解放をうたう左派と「14家族」の資金援助を得た右派が争ったこの内戦は、1992年に国連によって和平合意が成立するまで十年以上続きました。

 内戦がエルサルバドルにもたらした被害は壊滅的でした。12年間におよぶ内戦で約5万5千人が命を失いましたが、この和平協定によって、エルサルバドルのコーヒー産業は新たな道を切り開きました。

 アイーダの挑戦 コーヒーのゴミが宝になる時 ~エルサルバドルカスカラティー

ブラックハニーとは

 エルグァモブラックハニーは、エルサルバドル最西部に位置するアワチャパン県タクバ市にあるエルグアモ農園から届きました。

 コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

 この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

 ハニーと呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味が出るためと言われています。

 粘液質をどのくらい残すかで豆の見た目が変わり、完全に残すと、黒く、半分くらいだと赤く、薄いと黄色くなるため、ブラックハニー、レッドハニー、イエローハニーと分かれます。

 ミューシレージと呼ばれる粘液質を残した状態でゆっくりと乾燥させます。独特で濃厚な甘みとジューシーさを兼ね備えたコーヒーです。

ザンビアのイエローコーヒー記事

前回のエルサルバドルコーヒーはこちら

味について

 コーヒーを淹れた瞬間から、カップから黒糖とメープルの甘い香りが漂ってきます。

口に入れると甘さと一緒に酸味が飛び込んできますが、それは柔らかく、後に残りません。

香ばしさとコクもしっかり感じられ、後味もすっきりしてとても飲みやすいです。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:黒糖、メープル、檜

エルサルバドル ブラックハニー〜2021年3月限定コーヒー

3月となりました。街の中でちらほらと、早桜が咲くのを見つけました。寒かった冬が終わり、春が到来しました。

陽が沈むのが遅くなり、帰り道の空がいつもより明るいことに気づきます。忙しなく過ぎゆく日々の中で、ふと、移りゆく季節を目の当たりにすると、なんだか嬉しい気持ちがします。

さて、3月限定コーヒーはエルサルバドルから、「ブラックハニー」です。

「ブラックハニー」は、エルサルバドル最西部に位置するアワチャパン県タクバ市にあるエルグアモ農園から届きました。

ブラックハニーとは?

コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

ハニーと呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味が出るためと言われています。

粘液質をどのくらい残すかで豆の見た目が変わり、完全に残すと、黒く、半分くらいだと赤く、薄いと黄色くなるため、ブラックハニー、レッドハニー、イエローハニーと分かれます。

ミューシレージと呼ばれる粘液質を残した状態でゆっくりと乾燥させます。独特で濃厚な甘みとジューシーさを兼ね備えたコーヒーです。

ザンビアのイエローコーヒー記事

前回のエルサルバドルコーヒーはこちら

口に含んだ瞬間に果実味があふれます。青草のフレーバーが爽やかさを通してくれます。

しっかりとコクもあり、焼き芋の優しい余韻が残ります。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:林檎、青草、焼き芋

ザンビアコーヒー 蜂蜜→苦み→酸味

2020年3月の限定コーヒーはザンビアから「イエローハニー」です。

肥沃な火山灰土壌に恵まれたザンビア北部の農園から届きました。

コーヒーチェリーはハンドピックされ、丁寧に選別されます。ミューシレージ残して乾燥させる、ハニープロセスでコーヒー豆になります。

コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

ハニーと呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味が出るためと言われています。

粘液質をどのくらい残すかで豆の見た目が変わり、完全に残すと、黒く、半分くらいだと赤く、薄いと黄色くなるため、ブラックハニー、レッドハニー、イエローハニーと分かれます。

ザンビアイエローハニー、味はどうでしょう。

コスタリカのハニーコーヒー

前回のザンビアコーヒー

濡れた木、スモーキーさの中に、甘い香りが漂います。

口に含むと強めの苦味が広がりますが、それはまろやかさもあり、心地よいです。

ビターの後にはコクがゆったりと長く続いて余韻となります。

おもしろいのが、カップの途中から苦味に舌が慣れてくると、

今度は果実味のある酸味が出てくるのです。雑味のないピュアな酸味です。

一杯で二つの顔を見せてくれる楽しいコーヒーです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★☆

コク ★★☆

焙煎 ★★☆

香り スモーク、濡れた木、シトラス

コスタリカ 蜂蜜の罠にかかって


6月のコーヒーは「コスタリカ ハニープロセス」です。

コスタリカ、トレリオス地域の小農家から届きました。

コスタリカではコーヒーチェリーの果肉と粘液を完全に水洗いで落とした状態で、

乾燥させてコーヒー豆とするフルウォッシュド方式が主流ですが、

こちらのコーヒー豆は、ハニープロセスという、

果肉を取り除いた後、果実内の粘液が残った状態で乾燥させる方式で作られています。

この粘液はミューシレージと言い、その感触が蜂蜜と似ていることから、

ハニーとも呼ばれます。

ミューシレージには、糖分と酸味を含有しており、これを洗い流さずに乾燥させることで、コーヒー豆にこの成分が染み込むと言われています。

前回のコスタリカ記事はこちら

さて、飲んでみましょう。

カップに近づくと甘いフローラルが伸びやかに鼻を抜けていきます。

雨あがりの森の朝に迷い込んだような木々の香りが穏やかに漂います。

魅惑的な香りにとらわれたまま一口含むと、

強い花の蜜がわっと広がり思わず目を開きます。

蜜の芯にあった若々しい酸味が舌をからめとります。

その後にはなんともやさしい苦味がじんと余韻を残します。

甘み、酸味、苦味、そしてコク、それぞれの個性が際立ちながらも、

まるでそれぞれの役者が呼応しながら順になって芝居をするようなバランスにまさに心を奪われるコーヒーです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

焙煎 ★★☆