コンゴ マウンテンゴリラとアラビカコーヒーの話

新年あけましておめでとうございます。2022年1月限定コーヒーはからコンゴ「ビルンガパーク」です。

マウンテンゴリラが絶滅の危機にあるようだ。アフリカ中西部に生息し、そのDNAの98.3%は人間と同じで、笑いや悲しみといった感情を持つという。

その個体の3分の1は、コンゴの東端にあり、ルワンダ国境に近い「ビルンガ国立公園」に生息している。

この公園というと、人が集まり憩う場所というイメージだが、世界遺産に登録された7800km2 の自然は、公園というよりは野生保護区という表現が近いかもしれない。

放っておけば人間による乱獲と開発が繰り返され、野生の動植物は駆逐され、絶滅する一方であり、希少な種を「意図的に」保護するために国家により規制されている、というわけである。

しかし、この「保護区」に生息するマウンテンゴリラが絶滅しそうだという。その理由は、やはり人だ。

ビルンガ公園に隣接する隣国ルワンダでは、90年代に民族紛争が起こり大量虐殺も起きた。その頃に100万人以上の難民がコンゴになだれ込み、公園は難民キャンプとなった。そこから政治的な武装集団が生まれ、対立は公園にまで飛び火し、混乱の中でゴリラも密猟や生息地の荒廃により危機的な状況にあるようだ。

(ルワンダで起きた虐殺をテーマとした「ホテル・ルワンダ」という映画も有名)

周辺のコーヒー農家もマウンテンゴリラと同様に影響を受けていた。そもそも2,000m以上の標高、火山灰からなるミネラル分豊富な赤土、とアフリカのコーヒーベルトの中でもこの一体の土壌はコーヒー生産にとっては最高の環境であったにも関わらず、周辺の内乱や、そして適切な生産方法も販路もないために、粗悪な品質と低利益に陥っていたのだ。

ゲームチェンジが起きたのは、ファームアフリカというアフリカの農家を支援する慈善団体に大規模農業プロジェクトが始まったことだった。数々の専門家も巻き込み、本格的なプログラムが導入されたのだ。

・コーヒーとシェードツリーの苗床を設置
・作物の多様化を含む、適切な農業慣行のトレーニング
・健全なビジネスプランの育成と運転資金へのアクセス
・フェアトレードとオーガニックの認証取得
・コーヒーの品質管理、評価、コントロールに関する協同組合スタッフのトレーニング
・生産者がコーヒーの品質を監視し改善できるよう、カッピングラボの設置やマイクロウォッシングステーションのインフラと作業方法の改善
・現地の加工・保管能力の向上
・市場の開拓と確保

ビルンガ国立公園と共同で行なったプロジェクトは、EUからの資金援助を受け、本格的に実行され、また、北米の大手コーヒー卸も参画し、2020年に初めてのスペシャリティーグレードのロットが市場に出荷された。

この取り組みの成功は、公園周辺の農家と経済の安定化は、国立公園とそこで生きるマウンテンゴリラを始めとする野生保護にも大きな意味を持たらした。

コーヒーの秀逸さは、その余韻の美しさとその持続時間にあると思っておりますが、このコーヒーはその点においては比類のないものとなっています。

風味は豊かに、飲む程にフローラルな香りが優雅に広がります。

柑橘の酸味はほんのりと、深いコクが全体のバランスを引き締めます。

コーヒーをただ楽しむのに加え、ふと、紛争に荒らされたアフリカの農民やマウンテンゴリラの笑顔を浮かべると、なんだか美味しさがさらに増してくるように思えます。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:オレンジ、黒糖、フローラル

エルサルバドル アイーダが選んだコーヒーの未来:2021年12月限定コーヒー

12月限定コーヒーはからエルサルバドル「プラン デ バテア」です。

中米地域の太平洋側に位置するエルサルバドル。

エルサルバドルの多くは火山帯で、国土の標高が高く、雨季と乾季の差がはっきりしているため、コーヒー栽培に適した環境にあります。

今回のコーヒーは、当ホームページでも以前、コーヒー精製時のカスから生まれた茶であるカラカスティーが生まれる物語を紹介しましたトップ生産者のアイーダ・バトル氏によって品質の秀逸さから選ばれた農園となります。

前回のエルサルバドルのコーヒー記事

アイーダの挑戦 コーヒーのゴミが宝になる時 ~エルサルバドルカスカラティー

その香りと風味には奥深い香ばしさがあります。

一方、舌の上をすべる酸味は颯爽として心地よいです。

穏やかな珈琲時間に委ねながら、あの頃の瑞々しい記憶が立ち現れるような。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★☆☆

焙煎 ★☆☆

フレーバー:ベリー、とうもろこし、青草、レモン

エクアドル 赤道直下の原種 アンデスマウンテン〜2021年11月限定コーヒー

11月限定コーヒーはエクアドルから「アンデスマウンテン」です。

南米北西部、赤道直下にあるエクアドル

マナビ県カスコル地区は標高600メートルの小農家で生産されたコーヒーです。

ブルボンと共に、コーヒー豆の原種と言われるティピカを中心に栽培されています。

前回のエクアドルコーヒー

苦味もしっかり感じられ 大人の味わいです。

豆の深い香ばしさを感じられます。

舌に残る酸味に楽しさもあります。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★☆☆

甘み ★☆☆

焙煎 ★☆☆

フレーバー:ダークチョコレート、さつまいも、スモーク

インド 原風景の味 バドラエステート〜2021年9月限定コーヒー

10月限定コーヒーはインドから「バドラエステート」です。

インドのコーヒーをお届けするのは、実に3年ぶりです。前回ブルックリンと名付けられたコーヒーでした。

さて、インドには、私も過去に一度長旅で訪れたことがあります。20年近く前ですので、今は大きく変わっていることでしょうね。少し思い出してみます。

ニューデリーの空港に降り立ち、一斉に取り囲んでくるタクシーの客引き、交通ルールを無視した荒い運転で、ホテルのある街中へすごいスピードで走り抜けていく、夕日に照らされた交差点に、急に現われたの牛、一度、牛を見たと思うと、道という道に、牛が寝そべったり、歩いたりと悠然としたその姿が至る所に立ち現る。

ブッダガヤという、ブッダ生誕の地と言われる宗教都市では、宿坊に泊まった。要は安宿である。その宿の前は、まさに原風景とはこのこと、といった野生の風景が広がっていて、草原と、湖、そして世界の果てまで繋がっているかのような空。

ある時、この草原の向こうには何があるだろうと、ただひたすらに歩いていくと、人の足跡で舗装された小道が見えた。小道を歩いた先には、小さな小屋が表れた。その周りを眺めていると、中から主人とおぼしき初老男性が出てきた。

手の合図で中へどうぞといっている。現地の言葉を喋っているので、分からないのだが、歓迎してくれている様子なのはわかった。中へ入ると、座ってくれと合図され、こんなところに急に現れた東洋の旅人が珍しかったようで、なんだかお菓子やチャイを出してくれた。

お礼を言って外へ出て、来た道を戻っていくと、湖の背景が、夕日で赤々と染まり、原風景が、今度は、まるで絵画のような劇的なものに変わっていた。

湖の間の盛り上がった場所があり、そこにも草原があった。目を凝らすと、その辺りに女性たちが、辺りに座って楽しくおしゃべりをしている。壮大な夕焼けが湖の表面を照らし、その灯の色に女性達のサリーも染まっている。夕方の井戸端会議かと微笑ましく見ていると、ふと隣に小さな子供が立っていて、訛りの強い英語で「トイレしてるんだよ」とたしなめてきた。そそくさとその場を離れた。

南インドに位置するジリスと呼ばれるババ・ウ・ブタンの丘陵地。豊かで肥沃な農園の緑豊かな熱帯気候と、他に類を見ない高地のロケーションから生まれた風味をお楽しみいただけます。

インドは、年間を通じて気温が高く、はっきりと分かれた雨季と乾季があります。南部の大部分にはデカン高原といわれる台地が広がっており、コーヒー栽培は主にその南部高原地帯で盛んに行われています。

前回のインドコーヒー

泰然とした木の香りが漂います。

その風味はコーヒー豆をそのままかじったかのような強い香ばしさを感じることができます。

まろやかな風味で、酸味や苦味も少なく、ヒノキの香りが伸びやかに広がり、まろやかなコクと香りの余韻を長く楽しむことができます。

とてもリラックスする味ですね。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ヒノキ、ナッツ

メキシコ 海の味のする珈琲 ベラクルス ルビー〜2021年9月限定コーヒー

9月限定コーヒーはメキシコから「ベラクルス ルビー」です。

メキシコのコーヒー生産地は、南部に広がっています。ブラジル、コロンビアに次ぐ中南米第3位の規模となっています。主な生産地としては、

  • グアテマラ国境付近のチアパス州のタパチュラ
  • オアハカ州のオアハカ
  • プエブラ州のプエブラ
  • ベラクルス州のコアテペック

があり、今回はベラクルス、メキシコ湾から西に約50kmのコアテペックの標高1100mの農園で栽培されています。

ベラクルス地方は降雨量が多く、チェリーの成熟スピードが遅いため、時間をかけて塾度を高めやすいと言われています。

前回のメキシココーヒー

フルーティなみずみずしさがあります。ただ、味わいの深み、コクが小さいため、

その分、青みが強調されすぎている印象もあります。

後味はすっきりとした甘味と、マイルドなスモーク感

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★☆☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:レモン 蜂蜜 青草 炭

コスタリカ 海の味のする珈琲 ピランゴスタ農協〜2021年8月限定コーヒー

8月限定コーヒーはコスタリカから「ピランゴスタ農協」です。

マリンサウナ

そう呼ばれる乾燥工程で精選された非常に珍しいコーヒーです。

コーヒーの実を摘んで、果実や皮部分を落として、豆にする精選工程には、

ナチュラル(天日)

ウォッシュド(水)

などが主流です。

マリンサウナはその名の通り

収穫後のコーヒーチェリーを、ビーチへ運び、海辺で寝かします。

海風のマイナスイオンや、塩分・ミネラルを含んだ湿った空気でヒーティングすることによって、コーヒーチェリーの成分の分解を促進します。

2、3日マリンサウナを経て、アフリカンベッド(日陰干し)に移動して、じっくりと乾燥させて仕上げます。

前回のコスタリカコーヒー

スモーキー燻る 大人びた雰囲気の中 

とろりと甘い蜂蜜 青いレモンがしびらせる

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:レモン 蜂蜜 青草 炭

ケニア カリイ ファクトリー〜2021年7月限定コーヒー

7月限定コーヒーはケニアから「カリイ ファクトリー」です。

1984年に設立されたカリイ・コーヒーファクトリーは、

ケニアコーヒー名産地の一つ、キリニャガ地区にあります。

「ムティラ生産者組合」に所属するコーヒー工場(水洗処理・乾燥場)の一つです。

カリイファクトリーは、さらに、全体で600ほどの複数小農園グループで成り立っており、それぞれ200本程度のコーヒーの木(ケニア特有品種であるSL-28やSL-34など)を育て、ファクトリーに持ち込んでいるのです。

前回のケニアコーヒーこちら

深い奥行きはなく、爽やかなテイストですが、コクはしっかりと感じられ、余韻もクリーン。ベリーの甘味と絡んだ酸味が、シンプルな味わいに色合いを生み出している。全体のバランスもとても良いです。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ベリー、黒糖、青草

パナマ ダイアモンドマウンテン〜2021年6月限定コーヒー

6月限定コーヒーはパナマから「ダイアモンドマウンテン」です。

パナマの名門農家であるエスメラルダ農園の、カツアイ品種のブランドコーヒーである「ダイアモンドマウンテン」です。

エスメラルダ農園は、ゲイシャ品種のコーヒーが有名で、過去に幾度もパナマのコーヒー品評会「BEST OF PANAMA」を受賞しています。

農薬不使用、完熟豆のみを手積み、と厳格な品質工程で生産された最高品質のコーヒーです。

前回のパナマコーヒーはこちら

口に入れるとシトラスのジューシーな風味が広がります。

まるでアールグレイを飲んでいるような甘味と爽やかさ。

後味はすっきりと、スモーキーさが余韻に。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★☆☆  

フレーバー:シトラス、炭、アールグレイ

マラウィのゲイシャ〜ミスク農協〜2021年5月限定コーヒー

5月限定コーヒーはマラウィから、「ミスク農協」です。

マラウィは、アフリカ大陸、南北900キロに及ぶ細長い内陸国で、国土のほとんどが高原であり、マラウィ湖が大きな面積を占めています。

マラウィにコーヒーが伝わったのは1878年。スコットランドのブランタイヤにあった1本のコーヒーノキが移植されたものと言われています。

ミスク農協は、北部マラウィの中心地ムズズ市から320キロ離れ、マラウィとタンザニアの国境としているソングェ川にほど近い場所にあります。

2009年にフェアトレード認証、2011年に 4C認証を取得しており、現在オーガニック認証取得を目指しています。

今回コーヒーは、このミスク農協に属す、チプヤ村の農家によって生産されたロットとなります。

品種はゲイシャ、ニカです。

前回のマラウィコーヒーはこちら

まろやかな酸味の中に、ほんのりと漂うチョコレートの風味が特徴的です。

フレーバーは、青草や木の皮、レモンと、アジアの市場のような騒がしくも、余韻はあっさりと。目を閉じれば浮かぶ旅の思い出を探すように。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★☆☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★☆☆  

フレーバー:青草、木の皮、レモン、カカオ

ペルー トキイロコンドル〜2021年4月限定コーヒー

4月は始まりの月ですね。街には、入園式、入学式、入社式に参加する緊張した面持ちの、瑞々しい子供や若者が正装や、パリッとしたスーツで歩いているところを見かけました。

何かと制限の多い生活スタイルの中、それでも、新しい世界に進めることは、何より幸せなことと思います。制約はそれとして割り切って、思いきって、楽しんでもらいたいですね。

さて、4月限定コーヒーはペルーから、「トキイロコンドル」です。

ペルーは、南米西部に位置し、エクアドル、コロンビア、ブラジル、ボリビア、チリの5ヶ国に隣接しています。

ペルーにおけるコーヒーの始まりは、1700年代のスペイン植民地時代です。現在においても当時伝来された在来種ティピカが輸出される品種の70%以上となっています。

さらに、ペルーは世界でも有数のオーガニック認証やフェアトレード認証のコーヒー豆の輸出国でもあります。

本コーヒーは、バナナやアボカドのシェードツリーのもとで栽培されています。
収穫はすべて丁寧に手摘みし、天日干しされ、機械選別、電子選別、ハンドピックを通じて、一つ一つの豆は、非常に質の良いものとなっています。

なお、「トキイロコンドル」は、朱鷺色コンドル、という意味です。

前回のペルーコーヒーはこちら

柔らかい酸味が口の中に広がります。

瑞々しいテイストが、喉を通った後には、爽やかさとなって残ります。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★☆☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ナッツ、青草