インド 原風景の味 バドラエステート〜2021年9月限定コーヒー

10月限定コーヒーはインドから「バドラエステート」です。

インドのコーヒーをお届けするのは、実に3年ぶりです。前回ブルックリンと名付けられたコーヒーでした。

さて、インドには、私も過去に一度長旅で訪れたことがあります。20年近く前ですので、今は大きく変わっていることでしょうね。少し思い出してみます。

ニューデリーの空港に降り立ち、一斉に取り囲んでくるタクシーの客引き、交通ルールを無視した荒い運転で、ホテルのある街中へすごいスピードで走り抜けていく、夕日に照らされた交差点に、急に現われたの牛、一度、牛を見たと思うと、道という道に、牛が寝そべったり、歩いたりと悠然としたその姿が至る所に立ち現る。

ブッダガヤという、ブッダ生誕の地と言われる宗教都市では、宿坊に泊まった。要は安宿である。その宿の前は、まさに原風景とはこのこと、といった野生の風景が広がっていて、草原と、湖、そして世界の果てまで繋がっているかのような空。

ある時、この草原の向こうには何があるだろうと、ただひたすらに歩いていくと、人の足跡で舗装された小道が見えた。小道を歩いた先には、小さな小屋が表れた。その周りを眺めていると、中から主人とおぼしき初老男性が出てきた。

手の合図で中へどうぞといっている。現地の言葉を喋っているので、分からないのだが、歓迎してくれている様子なのはわかった。中へ入ると、座ってくれと合図され、こんなところに急に現れた東洋の旅人が珍しかったようで、なんだかお菓子やチャイを出してくれた。

お礼を言って外へ出て、来た道を戻っていくと、湖の背景が、夕日で赤々と染まり、原風景が、今度は、まるで絵画のような劇的なものに変わっていた。

湖の間の盛り上がった場所があり、そこにも草原があった。目を凝らすと、その辺りに女性たちが、辺りに座って楽しくおしゃべりをしている。壮大な夕焼けが湖の表面を照らし、その灯の色に女性達のサリーも染まっている。夕方の井戸端会議かと微笑ましく見ていると、ふと隣に小さな子供が立っていて、訛りの強い英語で「トイレしてるんだよ」とたしなめてきた。そそくさとその場を離れた。

南インドに位置するジリスと呼ばれるババ・ウ・ブタンの丘陵地。豊かで肥沃な農園の緑豊かな熱帯気候と、他に類を見ない高地のロケーションから生まれた風味をお楽しみいただけます。

インドは、年間を通じて気温が高く、はっきりと分かれた雨季と乾季があります。南部の大部分にはデカン高原といわれる台地が広がっており、コーヒー栽培は主にその南部高原地帯で盛んに行われています。

前回のインドコーヒー

泰然とした木の香りが漂います。

その風味はコーヒー豆をそのままかじったかのような強い香ばしさを感じることができます。

まろやかな風味で、酸味や苦味も少なく、ヒノキの香りが伸びやかに広がり、まろやかなコクと香りの余韻を長く楽しむことができます。

とてもリラックスする味ですね。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ヒノキ、ナッツ

ブルックリンとスモーク~オーギーのタバコ屋を探して


ニューヨークにブルックリンという街があります。

私がその街を知ったのは、10代の時に「スモーク」という映画を観てからです。

ブルックリンの街角でタバコ屋を営むオーギーという無骨な中年男が主人公の物語。

なんてこともない、このタバコ屋に訪れる近所の様々な人間達と触れ合い、ドラマが紡がれるですが、ハーヴェイ・カイテルが演じる、この不愛想だけどなんとも粋で愛らしいオーギーという人物に惹かれてしまう映画です。

この映画を観ているとブルックリンは下町の、名古屋なら大須、東京なら浅草な雰囲気の場所なのかなあ、と思うのですが、初めてこの映画を観たときはこの街がなんとも渋く、かっこよく思えてあこがれたものです。

3年前にブルックリンのホテルに1泊したことがあります。この時のブルックリンは、なんだか「ヒップスター(セレブや最先端の若者という意味らしい)」の闊歩する街、なんてガイドブックには書いてある、なんともおしゃれな街に変貌していました。

ニューヨークの中心であるマンハッタンの家賃高騰から逃げてきた新進気鋭のアーティストやクリエーターがソーホーを構える街、新しいカルチャーの生まれる街、、、なんだか街を歩いてもどこにもオーギーが立っているタバコ屋は見つかりませんでした。

さて、今月のコーヒーは、インドにあるブルックリンと名付けられた農園からお届けします。

2月のコーヒーはインドから

「ブルックリンエステート」です。

前回のインドのコーヒー記事

コーヒー豆

インド最南部タミル・ナドゥ州は高峻な山脈が走り、その奥深くには、

野生のバイソンが生息し、珍しい野鳥が飛び交う原生林が存在します。

ブルックリンと名付けられた農園は、霧深い丘陵の1400mの位置にあります。

この農園の歴史は1850に遡ります。モンスーンの降雨が豊かな土壌を作り出し、この土が独特のフレーバーを生み出します。

 

さて、その味は、

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香りは濡れた枯れ葉と燻したような独特のフレーバーが漂います。

口に含めばまずはしっかりとした苦味として、間髪おかずに酸味、

そして飲みごたえあるコクが現れます。

深めの焙煎ならではのスモーキーな香り、

まるでタバコ屋にやってくる個性豊かでくせの強いブルックリンの住人のように、

風味の一つ一つが主張しあうのが楽しい、ちょっと無骨なコーヒーです。

インドから届いたブルックリンコーヒーで「スモーク」な一服はいかがでしょう。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★☆

コク ★★☆

焙煎 ★★☆

航海時代の伝説と黄金のモンスーンコーヒー


柔らかい春の風が本当に気持ち良いですね。

満開だった桜ははや葉桜に

街には新入生や新入社員の初々しい姿がちらほら

さて、4月のコーヒーのご紹介です。

「インド モンスーン マラバール」です。

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まだ帆船の時代、コーヒーをインドからヨーロッパまで輸送するのに半年以上もかかりました。

この長い航海中に船倉に保管された コーヒー豆は時間をかけてゆっくりと熟成され、不思議なことに黄金色に変わり、独特の香味を持つようになりました。

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他のコーヒーにはない、そのエキゾチックな風味は人々を魅了しました。

その後、帆船から蒸気船へと変わり、スエズ運河が開通すると、インドからヨーロッパまでの航海日数は大幅に短縮 されることになり、時代と共にこのコーヒーは姿を消しました。

しかし、人々はあの黄金色のコーヒーの独特の香味を 懐かしみ、インドのコーヒー生産者はこの熱望に応えるために、アラビア海から吹き付けるモンスーン(貿易風・季節風) を利用したモンスーンコーヒーの生産をアラビア海に面するマラバール海岸で始めました。

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インド南部中央に位置するマンガロール産アンウォッシュド・アラビカコーヒーをパーチメントの状態で、南西のアラビア 海岸部(マラバール海岸)に運びます。

風通しの良い倉庫で4~6インチの厚さに広げ、数日間乾燥させ幾度となく丁寧に かき混ぜ、その後袋に詰めて列に並べ寝かせます。

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モンスーンがコーヒー全体に均一に吹きあたるようにするために、 列と列の間は十分に広げ、袋の列を並び変えます。さらにコーヒーを袋から出しては詰め替える作業を繰り返します。

こうして手間暇をかけた作業を6~7週間も続けると、あの黄金色の姿と独特の持ち味を、当時のまま残した モンスーンコーヒーが出来上がります。

さて、その味は、

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今までに触れたことのない独特の香りに少し驚きました。

その味は苦味がまずしっかりと現れます。

だけど、全体にみずみずしさがあり、まるで煎ったお茶のような不思議な風味があります。

個性的な味で、とても面白いコーヒー体験ができますが、苦手な方もいらっしゃるかもしれません。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ☆☆☆

コク ★☆☆