ボリビアから届いた昭和のJazz喫茶の渋み〜ボリビア ソル・デラ・マニャーナマニャーナ(2023年10月)

ボリビアのコーヒーの成り立ち

 ボリビアのコーヒーについて紹介したいと思います。ボリビアは南米大陸に位置し、国土の30%以上をアンデス山脈が占めています。ボリビアの首都である「ラパス」は、標高が3500mもあり世界一高い首都と呼ばれ有名です。

コーヒー生産地として最も有名なブラジルやペルーに隣接していて、コーヒー栽培に適した地形や気候となっています。

ボリビアのコーヒーの歴史についても触れたいと思います。

19世紀のスペイン植民地時代に入植したスペイン人によって始められました。当初は、首都ラパスの近くで始まりましたが、標高が3000m以上の土地が多く、土壌も痩せていたために、コーヒー栽培はうまくいかなったようです。

その後、栽培をする土地の標高を徐々に下げていき、標高1000~2000mの山の斜面などで栽培されるようになると、コーヒー豆の栽培は安定し、生産量は増加していったようです。

ラパス北東にある、アンデス山脈の北東山嶺ユンガス地方のコパカバーナ農園のコーヒー豆は質の良いものとして輸出されています。当店でも以前コパカバーナ農園のコーヒーをご提供したことがあります。

ラパスから北東、アンデス山脈をすこし下がった先のカラナビ地方、その山脈には肥沃な土壌が広がっており、山肌全体を覆うほどの雲霧がもたらす恵みの雨と相まって、多くの生命を育んでいます。

アナエロビックという名の発酵

 ソル・デラ・マニャーナはスペイン語で朝日を意味する、社会貢献プログラムです。地域の零細農家へ向けて、コーヒー生産のあらゆるプロセス(苗床から始まり、植え付け、収穫、害虫予防、剪定、財務管理など)を7年間かけて指導しています。

コーヒー豆の精製(コーヒーチェリーの果肉から豆に加工するプロセス)において、以前ザンビアのコーヒー記事で紹介したアナエロビック発酵を行っています。

アナエロビック

 コーヒーの精製方法には大きく分けてナチュラルとウォッシュドがあり、その中間と言えるパルプドナチュラル(ハニー)が主流となっていましたが、最近、嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)という手法が採り入れられ始めました。

コーヒーチェリーを酸素が遮断された密閉容器内で発酵させるというもので、酸素を使わない微生物の働きを利用したものです。

発酵酵母の中には、酸素がないところで活動的になる酵母がいて、発酵すると、通常の発酵時とは違った味わいやフレーバーが生まれます。

酸素を嫌がる酵母を活発にするために、空気を抜いて発酵させるやり方を「嫌気性発酵」、今日のアナエロビックファーメンテーションと言います。コーヒーチェリーをタンクや容器などにつめ、空気を抜き、酸素をなくした状態で発酵させるやり方です。

ワインで取り入れてきた手法で、コーヒーではまだまだ前例が少なく冒険的な取り組みです。

昭和のJazz喫茶、あの渋いコーヒー

 繁華街の雑居ビル2階にその喫茶店はあった。外からは全く目立たない。塗装の禿げた階段を上がると暗い木製の扉が見えた。不安げに扉を開いた途端、サクソフォンの甲高い音が耳に飛び込んできた。小さな店内の端には巨大スピーカーが2台括りつけられていて、Jazzの音が縦横無尽に空間を覆いつくし、内臓に響くかのように迫ってきた。

カウンターと小さなテーブル席が2つ、そこにいる数名の客は皆一人で来ているようだ。誰も一言も発さず、目を閉じてただ駆け巡る音に身を任せている。カウンターの片隅に座ると、向かいに座るママにホットコーヒーを頼んだ。愛想よくはいホットコーヒーですねときびきびと立ち上がった。

ホットコーヒー、お待ちどうさま、厚みのある真っ白なカップに入ったコーヒーが目の前に置かれた。口をつけると、少し酸っぱさがあるが、苦くはないな、と思ったら、舌がじんじんする渋さがきた。これは甘くないコーヒーだな、とひとりごちると、どこからか漂ってきたタバコの煙が鼻を通り過ぎた。そうか、ここは昭和のジャズ喫茶だ。

飲んだ瞬間、口回りの酸味に気づきます。苦味はなくまろやかな口当たりです。その後、舌に鉄っぽさが浮き上がってきます。そして、スモーキーな余韻が長く燻らせます。大人のなかなか渋いコーヒーです。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:鉄、青草、黒糖

農園データ

生産国ボリビア
生産地域ラパス、カラナビ
生産高度1,550m
精選方法ウォッシュド アナエロビック発酵
品種カトゥーラ、カツアイ、ブルボン