革命のエコーで踊れ〜ペルー サンチュアリオ 2025年9月限定コーヒー (コーヒートラベラーNの手記8)

古い地図と聖なる谷の冒険

Nは、ペルーのCajamarcaの霧深い山道を歩いていた。手に握るのは、1968年の革命の年に書かれた古い地図だ。紙の端は擦り切れ、インクで書かれたメモが薄く残っている。

「Santuario—聖なる場所」

と書かれた一文に導かれ、San Ignacioの谷にたどり着いた。朝陽がアンデス山脈の斜面を照らし、グアノの香りを帯びた火山土壌が足元で柔らかく響く。

目の前に広がる小さな農園では、コーヒーの木々がバナナの木陰に守られ、赤いチェリーが朝露に輝いている。

「ようこそ、私たちの谷へ。」

農家のマリアが笑顔で迎えた。彼女はAPROCASSI協同組合のメンバーだ。600人以上の零細農家が集まり、この谷で未来を育てている。

「この地図、どこで見つけたの?」

マリアが地図を覗き込みながら聞いた。

Nは、革命の遺産が息づくこの場所で、冒険の始まりを感じた。

革命の種、再生の物語

Nは地図を広げ、マリアに尋ねた。

「この谷のコーヒーは、どんな歴史があるの?」

マリアは目を細め、遠くの山並みを指さした。

「18世紀、フランス人宣教師がアラビカ種を持ち込んだのが始まりよ。19世紀には、『黄金の豆』として輸出が盛んになり、国を支えたわ。」

しかし、1968年の革命がすべてを変えた。大農園は解体され、土地は小さな農家に分けられた。平均5エーカーの畑で、農家たちは新しい夢を植えた。

「内戦の傷跡が残る中、1980年代から協同組合が生まれ、スペシャルティコーヒーへの道が開かれたの。」

マリアの声に、誇りがこもっていた。

Nは、谷の風に吹かれながら、革命の種が今も芽吹いていると感じた。

サン・イグナシオの街角、響く鼓動

農園訪問の前、Nはサン・イグナシオの小さな町を歩いた。石畳の細い通りは、色鮮やかなアドビの家々が連なる—アドビとは、日干しレンガでできた伝統的な建物で、土の温もりが感じられる。

市場では、マンゴーやパパイヤの甘い香りが漂い、広場で子供たちが笑い合う。路地を曲がると、老人が木陰で「ティコ」をすすっていた—ティコとは、小さなカップに入れたエスプレッソ風の濃いコーヒーで、地元の人々の日常の活力源だ。Nは、その素朴な一杯に、谷のコーヒーの源流を感じた。

屋台の女性が、元気よく呼びかける。「タマーレス!新鮮よ!」タマーレスとは、トウモロコシの粉を練った生地を具材と混ぜ、トウモロコシの葉に包んで蒸した伝統食だ。Nは一つ手に取り、支払うと、女性が「アンデスの味を味わってね!」と明るく言った。

彼女の顔は日焼けし、目尻に笑いジワが刻まれ、谷の厳しい生活を物語るが、声は温かく、客を家族のように迎える雰囲気だ。Nはベンチに腰を下ろし、タマーレスをかじった。熱々の蒸気が立ち上り、トウモロコシの優しい甘さとスパイスのピリッとした刺激が広がる。

街の喧騒—鶏の鳴き声、バイクのエンジン音、子供の笑い—が、革命の落書きが残る壁とともに、町の鼓動を伝える。このコントラストが、静かな谷の農園と繋がり、Nの心に深い印象を残した。

路地裏で、壁に残る革命の落書きを見つけた。色褪せた「Tierra y Libertad」(土地と自由)の文字。この町の鼓動は、1968年の革命のエコーだ。農家たちが土地を取り戻し、コーヒーの木を植えたように、この町もまた、過去と未来を繋ぐ生き物だと感じた。Nは、市場の喧騒と静かな谷のコントラストに、聖なる場所の息吹を見た。

聖なる谷の恵み

San IgnacioとJaenの高地、標高1,450メートル。火山性土壌がミネラルを蓄え、アマゾン川の源流近くの熱帯雨林気候が豆を育む。昼の暖かさと夜の冷気が、チェリーをゆっくり熟成させ、深い味わいを宿す。

「この土、グアノで養われているのよ。海鳥の糞から作られた肥料で、土を豊かにするわ。」

マリアが土を手にすくい、Nに差し出した。

バナナやアボカドのシェードツリーが土壌を守り、生物多様性に満ちたこの谷は、気候変動の干ばつやさび病に立ち向かいながら、持続可能な未来を築いている。APROCASSIの農家たちは、女性農家が3割を占め、子供たちの学校を支え、森を再生する。

「私たちは、この聖なる場所を、みんなで守っているの。」

マリアの言葉に、谷の力が響いた。

品種のハーモニーと、クリーンな秘密

Nは木に近づき、マリアに尋ねた。

「Santuarioのコーヒーは、どんな品種なの?」

マリアは木の葉を撫で、微笑んだ。

「Typicaのナッツのような甘さ、Bourbonのフルーティーな深み、Caturraの明るい酸味よ。60%以上が伝統品種で、谷の物語を語るわ。CatimorやCastilloはさび病に強く、未来を守る力を持つ。」

Nは、品種の多様性がこのコーヒーの魂だと感じた。

マリアが続けた。

「Washedプロセスが、その魂をクリーンに引き出すの。」

完熟チェリーを摘み、果肉を剥がし、20-36時間発酵させてミューシレージを分解。水で丁寧に洗い、アフリカンベッドで10-20日ゆっくり乾燥させる。

Nは、農家が豆をかき混ぜる姿を見た。

「まるで、谷の秘密を解き明かす鍵ね。」

マリアが笑った。このプロセスが、雑味のないクリーンな風味を生む。

カップに宿る、聖なるダンス

カッピングルームで、Nは一杯を手に取った。

香りはベリーとオレンジ、雨後の土の清々しさ。飲むと、しっかりした苦味がまず広がるが、渋みやえぐみは一切ない。

スムースで抵抗なく、酸味がベリー系の甘みと心地よく踊る。甘さはくどくなく、舌の上でまろやかな旨味となって転がる。

飲んだ後は、まるでそれまでの味のダンスがなかったかのように、優しいビターが静かに残る。そしてまた、ダンスの輝きを楽しむために飲みたくなる。

SCAA 2010年の1位、Qグレード83.25点の評価が、この豆の輝きを証明する。Nはカップを置き、微笑んだ。革命の種、農家の情熱、聖なる谷の土—すべてがこの一杯に繋がる。サン・イグナシオの街角で感じた鼓動が、カップの中で響き合う。自分は旅人として、このダンスを世界に届けるのだ。

この物語を、あなたのカップで。

西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。

※本記事は、ペルー・Cajamarca県San Ignacioの「Santuario」の歴史と特徴を基に創作されたフィクションです。コーヒーの味わいとともに、その土地の記憶と人々の営みを感じていただければ幸いです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:ベリー、オレンジ、雨後の土

農園データ

生産国ペルー
標高1,450〜1,700m
品種ティピカ、カツーラ、カツアイ、カチモール、カスティージョ、ブルボン
精選ウォッシュド

農園データ

火山と古木の贈り物〜パカマラレッドハニー 2025年8月限定コーヒー (コーヒートラベラーNの手記7)

火山の贈り物と、古木の記憶

Nは、エルサルバドルのケサルテペケ(Quezaltepeque)の霧に包まれた山道を、

ゆっくりと登っていた。

朝の陽光が、San Salvador Volcanoの噴火口、El Boquerónを優しく照らし、

足元の火山灰土壌がシンと音を立てる。

標高1,300メートルを超えるこの斜面で、

Nは一本の古い木に目を留めた。

60年以上前に植えられたRed Bourbonの木だ。

太い幹は風雨に耐え、

葉の間からパカマラ(Pacamara:コーヒー品種)の大きな実が、

朝露をまとって輝いている。

軽く風が吹き、

土のミネラル混じりの新鮮な香りが、

鼻をくすぐった。

この古木は、ただの木じゃないの。私たち家族の絆を象徴しているのよ。

農園主のアニー(Anny Ruth Pimentel)が、

穏やかな笑みを浮かべて語った。

ロマラグロリア農園(Finca Loma La Gloria)は、1990年代後半、

彼女の父Roberto Pimentelから

結婚の贈り物として託された農園だ。

土木エンジニアだった父は、

この火山の麓の土地を娘にプレゼントし、

コーヒーの未来を託した。

内戦の傷跡がまだ生々しい時代に、

それは復興の象徴だった。

Nは、アニーの瞳に映る父の記憶を、

静かに想像した。

歴史の影と、再生の光

エルサルバドルのコーヒーの物語は、

18世紀後半にグアテマラから持ち込まれた

アラビカ種の種子から始まる。

19世紀には「黄金の豆」として国を支え、

輸出が国家の収入源となった。

コーヒーのおかげで、

学校や道が作られ、

人々の生活が豊かになった。

でも、1980年から1992年の内戦で、

多くの農園が荒れ果て、

家族たちは土地を失った。

Nは、遠くの山並みを眺めながら、

そんな暗い影を思った。

しかし、戦後、

政府と国際支援の手で、

コーヒーは再生した。

高品質なスペシャルティコーヒーへシフトし、

ケサルテペケ(Quezaltepeque)のようなコーヒー産地は、

シトラスやフローラルのバランスの取れた風味で、

世界に知られるようになった。

シェードグロウン—木陰で育てる方法—

が主流で、

環境を守りながら豆を育てる。

アニーは父の遺志を継ぎ、

2001年に自園の精製施設を建て、

収穫から精製までを一貫して管理。

地元のコミュニティを雇用し、

教育プログラムを展開する。

土地と人々が、

再び繋がっていく光景だ。

火山の力、土のミネラル

Nは、手で土をすくい上げた。

火山灰の細かな粒子が、

指の間を滑り落ちる。

豊かなミネラル—

カリウム、マグネシウム、鉄分—

が、コーヒー豆に深い味わいを吹き込む。

標高の高いこの場所では、

昼の暖かな陽射しと

夜の冷たい風が、

豆の成熟をゆっくりと進める。

シェードツリーの葉ずれ音が、

周囲に響き、

パカマラ(コーヒー品種:Pacamara)の実は、

火山の恵みをたっぷり吸収して育つ。

古木の根は、土深くまで張り、

1917年の噴火の記憶さえ

乗り越えてきた。

噴火口El Boquerónを遠くに望む

この農園は、

地震のリスクを抱えながらも、

生物多様性に満ちた

El Boquerón国立公園に隣接する。

Nは、青々とした葉の海を眺め、

自然と人の共生を感じた。

火山の力が、

土に命を与え、

豆に独特の明るい酸味を宿す。

古木の品種と、ミューシレージの秘密

パカマラは、エルサルバドルが生んだ

特別なハイブリッド品種だ。

1958年、研究所でPacas(Bourbonの変異)とMaragogypeを交配し、

30年以上の努力で完成した。

大粒で希少、

遺伝が少し不安定だから収量は少ない。

でも、それがプレミアムな価値を生む。

風味は明るい酸味(オレンジ、シトラス)と

甘味(キャラメル、ハニー)、

さらにチョコレートやフローラルのニュアンス。

農園の古木は、

60年以上の歳月が、

味わいに深みを加える。

気候変動の脅威下で、

こうした品種を守る努力が続いている。

精製はレッドハニープロセス。

完熟したチェリーを手で丁寧に摘み、

果肉を除去した後、

ミューシレージ—粘液層—を40-60%残す。

この層に含まれる糖分

(フルクトース、グルコース、ペクチン)が、

乾燥中に豆に染み込み、

甘味と果実味を豊かにする。

パティオで10-20日、

天日でゆっくり乾燥させ、

定期的にかき混ぜて発酵をコントロール。

火山のミネラルが

ミューシレージの成分を活かし、

土の繋がりをカップまで届ける。

Nは、豆の表面に残る甘い粘りを指で触れ、

秘密のプロセスに魅了された。

カップに宿る繋がり

カッピングルームの柔らかな光の中で、

Nは一杯を口に運んだ。

まず、しっかりと苦味が舌を包み、

酸味の刺激がピリッと走る。

青い果実を齧ったような渋さが、

余韻に残る。

ファーストインプレッションは、

屹立した峠のように厳しく感じる。

でも、次にしっかりとしたコクと深みが広がり、

余韻の中に甘みが漂う。

何より、旨味が全体を優しく繋ぐ。

峠の頂上で広がる甘美な景色が、

混ざり合うようだ。

一筋縄ではいかない、

コーヒー通の心を掴む豆だ。

Cup of Excellenceでの過去優勝

(2003年、2008年、89-92点の記録)と

国際レビュー(Coffee Review 92点: スムースでフルーティー)が、

この味を証明する。

Nは、カップを置いて微笑んだ。

古木の贈り物、

家族の継承、

火山の土—

すべてが繋がり、

この一杯に宿る。

自分も旅人として、

この繋がりを世界に届ける。

この物語を、あなたのカップで。

西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。

※本記事は、エルサルバドル、ロマラグロリア農園の「パカマラレッドハニー SHG」の歴史と特徴を基に創作されたフィクションです。コーヒーの味わいとともに、その土地の記憶と人々の営みを感じていただければ幸いです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:青い果実、ダークチョコレート、濡れた木

生産国エルサルバドル
農園ロマラグロリア農園
標高1,200〜1,700m
品種パカマラ
精選レッドハニー

農園データ

ミエリッヒ家のレモン畑〜リモンシリョ ジャバニカ ウォッシュド 2025年7月限定コーヒー (コーヒートラベラーNの手記6)

農園の書庫で見つけた一冊の本

リモンシリョ農園に着いて間もなく、Nは訪問者用の控え室に通された。

壁際の低い書棚に、一冊だけ背表紙が革張りの本があった。

“Historia de Mierisch”――エンボス加工されたその文字を指先でなぞる。

手に取るとずっしりと重く、ページの間から少し乾いた紙の香りが立ち上った。

Nは、静かにページをめくった。

第1章:ブルーノの開拓と始まりの木

第一章には、一枚の古い写真が貼られていた。ドイツ風の服装をまとった若き男性。

「ブルーノ・ミエリッヒ・ボエティガー。1890年代、ニカラグア鉄道建設に従事し、山間部の136ヘクタールの土地を得る。その地を“Las Lajas”と呼び、1908年、ティピカ種の木を最初に植えた」

書き込みは端正で、ところどころに手書きの補足が加えられていた。

Nは思った。この地に立ち、異国の空に挑んだ若者がいたこと。

誇り高くも、静かな始まり。

第2章:博士の帰還と改革

ページを進めると、次に現れたのは「Erwin R. Mierisch」の名前だった。

米国で学び、研究者としての道を選びながらも、農園を継ぐため帰国した三代目。ページには、1990年代以降の改革の記録が綴られていた。

「大量生産からスペシャルティへ。地域共生の哲学を導入し、労働者3000人への福祉制度、教育、医療インフラを整備。品種開発・精製プロセスも改革」

その隣に、鉛筆書きでこう記されていた。

「2001年、帰路の農道で“ジャワ”と記された種袋を拾う。由来不明。育成開始」

何気ない一文だった。

だがNは、その言葉にしばらく指を置いた。

拾われた種。誰にも知られず、名前すらなく、ただ持ち帰られた一粒。

それがやがて、「ジャバニカ」として世界中のロースターを驚かせる存在になる。

ページの余白には、小さなインクで「2007年 CoE 第2位」とだけ記されていた。

第3章:現在を担う若き継承者

最終章には、見覚えのある笑顔があった。

第五世代、エルウィン・ジュニア。通称“Wingo”。

農園の現責任者。発酵制御・乾燥技術の精度を高め、さらなる味の多様性を追求する日々。

どのページも“継承”というより、“更新”という言葉がふさわしかった。

本の中に挟まれた種の記憶

本を閉じる前に、Nはしばらくそのままページを見つめた。

折り込まれた一枚の紙。そこには、くすんだ茶色の種袋の写真が貼られていた。

“Javanica – 2001. sin nombre.”

名もなきときに、味は既に始まっていたのだ。

味わうことで立ち上る時間

カッピングルームの静けさの中で、Nは一杯のジャバニカを手にした。

豆を挽くと、まるでページをめくるように香りが立ち上る。

最初の印象は、驚くほどクリーン。重さやとろみのない、すっと舌の上を滑る質感。

そして、ダージリンのような優雅さをほのかに湛えた酸味が、ゆっくりと口の中に広がっていった。

その余韻の中に、Nはふと、ほんのりとレモンのような爽やかな酸を感じ取った。

紅茶にレモンを一滴垂らしたような、繊細で明るい香り。

その瞬間、記憶の底から“Las Lajas”という言葉が浮かび上がる。

ミエリッヒ家が、この土地を手に入れたときに名付けた名——レモン畑。

100年以上前、ブルーノがこの地で見つけた小さなレモンの木々。

それが耕され、受け継がれ、やがてジャバニカとなり、

いま自分のカップにまで続いていたのだ。

土地の香りは、名前を変えてもなお、香りとして残る。

そのことに気づいたNは、深く、静かに感動していた。

透明な味。

それは名よりも前に存在していた時間の香りだった。

本を閉じ、未来へ向かうまなざし

本を閉じて、Nは深く息をついた。

道端で拾われた無名の種。

異国の土地に根を張った家族の歩み。

名を得る前から宿っていた静かな価値。

そして、自分自身。

いつか、誰かに見出され、拾われた瞬間があったこと。

あの一粒が育った時間を、一杯の中に感じながら、

Nはそっとカップを口元に運んだ。

このコーヒーは、“ジャバニカ”という名前の前にある物語を、今も静かに語っている。

※本記事は、ニカラグアのマタガルバ地区にあるミエリッヒ家によって経営される「リモンシリョ ジャバニカ ウォッシュド」の歴史と特徴を基に創作されたフィクションです。

コーヒーの味わいとともに、その土地の記憶と人々の営みを感じていただければ幸いです。

この物語を、あなたのカップで。
西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。


—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ダージリン、レモン

農園データ

生産国ニカラグア
標高980〜1,350m
品種ジャバニカ
精選ウォッシュド

トラジャの深煎りと、角の家のこと ― セレベスのG1を味わう〜インドネシア セレベス アラビカG1 2025年6月限定コーヒー (コーヒートラベラーNの手記5)

山の町と、柱に並ぶ角

標高1600メートル。セレベス島、トラジャ高地の静かな町に、Nは足を踏み入れた。

空気は澄んでいて、山の影がゆっくりと動いている。ふと見上げた家の柱に、水牛の角が何本も重ねられていた。

「この角はね、葬儀で捧げた水牛の数。つまり、その家の誇りの数です」

近くにいた青年が、少しだけ誇らしげに語った。

派手な飾りではない。ただ静かに、重ねられた角が、ここに生きる人々の時間と誇りを物語っていた。

Nは、言葉ではなく形で残された想いに、深く惹かれた。

湿った島で仕上げられる豆

山あいの農園では、赤く熟したチェリーがかごに集められ、手作業で一つずつ確認されていた。

「この土地は湿気が多いから、時間との勝負です」

農園主が、チェリーを果肉除去機(パルパー)に流し込みながら話す。

果肉が外れた豆は発酵槽で一晩眠り、翌朝、丁寧に水で洗い流される。

そして、まだ水分を多く含んだ状態の豆が、脱穀機へとかけられる。

この地特有の「スマトラ式精製」。湿度の高い気候に適応した、合理的でありながら繊細な工程。

インドネシアは、世界でも有数のコーヒー大国。国全体ではロブスタ種の生産が中心だが、高地ではアラビカ種が静かに育てられている。

それぞれの島が個性を持ち、スマトラ島ではマンデリン、ジャワ島ではティピカ、バリ島やフローレス島、そしてここスラウェシ島では“セレベス・アラビカ”として知られる味が育まれている。

この地のアラビカG1は、湿潤な空気と高地の冷涼な風をまといながら、静かに精製されていく。

手の中の品質

小さな集買所では、麻袋からこぼれた豆が選別台に並べられていた。

「G1は、300グラム中の欠点豆が11粒以下なんです」

スタッフが語る声は落ち着いていたが、その目は真剣だった。

Nは一粒ずつ確かめられていく豆を眺める。誰かの手が、誰かの目が、そのすべてを通って仕上がっていく。

「この豆には、飾りはないけれど、確かに人の想いが積み重なっている」

赤土の丘、昼夜の寒暖差、そして小さな農家のていねいな作業。

味の背後にある風景が、ゆっくりと浮かび上がってくるようだった。

味わう:芯に残る香ばしさ

焙煎されたアラビカG1をミルにかけた瞬間、深く香ばしい香りが立ちのぼる。

豆を挽いたときの匂いには、どこか薪をくべた火のようなあたたかさがある。

ゆっくりと淹れた一杯を口に含む。

まず届くのは、しっかりとした苦味。だがすぐに、丸みを帯びたコクとやわらかな甘みが舌に残る。

深煎りならではの香ばしさが、静かに広がっていく。

「この味は、湿気の中で育ち、人の手で磨かれてきた記憶のようなものだ」

芯の部分にしか残らない何かが、確かにある。

結び:香りで語る、飾らぬ誇り

山の家の柱に並ぶ水牛の角。

豆を選ぶ人の手。雨上がりの斜面に広がる畑。

派手な言葉ではなく、静かな積み重ねが、この味を作っていた。

「形は残らなくても、香りは語る」

Nは、カップの底を見つめながら、小さく息をついた。

焚き火のように、ゆらゆらと漂うその香りのなかに、土地の記憶が溶け込んでいた。

※本記事は、インドネシア・セレベス島のトラジャ&エンレカン地域で生産される「セレベス・アラビカ G1」と、そのスマトラ式精製プロセスを基に創作されたフィクションです。

コーヒーの味わいとともに、その土地の記憶と人々の営みを感じていただければ幸いです。

この物語を、あなたのカップで。
西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。


—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★☆☆

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★★  

フレーバー:ほうじ茶、黒糖、シガー

農園データ

生産国インドネシア
標高約1,500m
品種アラビカ G1
精選スマトラ式(スマトラプロセス/セミウォッシュド)

コーヒートラベラーNの手記4:木が話すとき ― アカシアの丘で交わされた、語られぬ記憶〜タンザニア アカシアヒルズ 2025年5月限定コーヒー

はじまり:風が揺らす、無言の木

Nがアカシアヒルズ農園に着いたのは、標高1,900メートルを超える午後のことだった。薄い空気に包まれた丘の上で、一本のアカシアの木が静かに風に揺れていた。

「この木は、いろんなことを見てきた。」

そうつぶやいた農園主レオンの言葉に、Nは足を止めた。風は枝をわずかに鳴らし、まるで何かを語りかけてくるようだった。

木は話さない。でも、話すときがある。

Nはそう思った。

タンザニアの記憶:コーヒーという希望

かつてタンザニアには、無数の小さなコーヒー農園が点在していた。19世紀末、ドイツ人によって持ち込まれたアラビカ種。標高1,500mを超える冷涼な高地に広がる赤土の大地は、コーヒーの栽培にとって最適な環境だった。

しかし、長く続いた植民地支配、政治の混乱、インフラの未整備……さまざまな理由でタンザニアのコーヒーは「量は多いが、質はまばら」と言われてきた。

そんな中、2000年代に入り、スペシャルティコーヒーという新しい価値観がこの国にも流れ込んだ。

「質の高い豆を、丁寧に作る」

――そのシンプルな挑戦が、いくつかの農園の中で芽吹きはじめた。

アカシアヒルズ農園も、そんな挑戦のひとつだった。

三代目が選んだ丘:過去を越えて、豆の未来へ

レオン・クリスティアナキスは、祖父母の代から続くコーヒー生産家系の三代目だった。かつて家族が営んでいたのは、タンザニアの低地に広がる農園。しかし、熱帯の気候では品質の高い豆が育ちにくく、満足いく結果が得られなかった。

2000年代に入り、スペシャルティコーヒーという概念に出会ったレオンは、心を決めた。

「このままじゃ、終われない。」

彼は高地を探し、そしてたどり着いたのがこの丘だった。荒れ果てていた農園跡地に立ち、風に揺れる一本のアカシアの木を見たとき、確信した。

「ここなら、いける。」

木は語らなかったが、何かを見せてくれていた。

この丘では、ケニア由来のSL28という品種が育てられていた。強い日差しにさらされながらも、豊かな酸味と果実味をたたえた高品質なアラビカ種。その豆は、レオンの理想を体現するかのように、じっくりと力強く育っていた。

精選の場:沈黙の中で磨かれる豆

丘の中腹にある精選所。朝採れたばかりのチェリーが赤く熟れ、次々に搬入されていく。水路を流れる豆たちは、やがて発酵槽へと沈められる。

「水で洗うことで、豆の芯が見えてくるんです。」

レオンの横顔は、どこか寡黙だったが、その瞳には確かな意思が宿っていた。数時間の発酵の後、何度も水で洗われた豆は、ざらりと手に心地よく馴染んだ。

沈黙も、洗われて、形が見えてくるのかもしれない。

Nはそう感じた。

乾燥棚にて:風が語る豆の未来

収穫から48時間後、アフリカンベッドの上で豆が静かに乾かされていた。天日と風に晒されながら、豆はじっくりと水分を抜き、風味を深めていく。

若いスタッフが手で豆を混ぜながら言う。

「言葉より、作業で伝えるんです。」

アカシアの木の影が乾燥棚の端を覆っていた。レオンがふと語る。

「日陰にこそ、旨みが宿る。焦って乾かしてはいけないんです。」

風が吹いた。枝が揺れた。豆がわずかに転がった。

風が吹くと、枝が語り出す気がした。

一杯の味:沈黙と衝突の間に

焙煎されたサンプル豆が届き、レオンとNはカップを前に並んだ。香ばしい、焦げたアーモンドのような香りが広がった。

一口、口に含む。

最初に走るのは、ビビッドな酸味。青リンゴのような青さが広がり、すぐに深いコクと重なる。その間に、心地よい渋みが舌に残る。

「若さとビターさがぶつかり合ってる。でも、そこに旨みがある。」

Nは目を閉じて感じた。

語られなかった物語が、味として立ち上がってくる。

結び:あなたにも聞こえますか?

再び風が吹いた。アカシアの木の枝が、ささやくように揺れる。

「話さない人たちが残したものが、今ここで香っている。」

この丘の風、木の影、洗われた豆の静けさ。

そのすべてが、この一杯に宿っていた。

この沈黙の物語を、あなたのカップでも味わってみませんか?西原珈琲店で。

Nの謎:遠い丘に残したもの

農園を発つ朝、レオンが聞いた。

「N、あなたはなぜこんな旅を?」

Nは答えなかった。ただ、小さなノートを取り出し、アカシアの葉を一枚挟んだ。

僕の祖父は、最後まで何も語らなかった。僕もまた、語らないことで、誰かの声を聞こうとしているのかもしれない。

誰かの言葉の代わりに、この土地の風景と味を残す――

それが、Nの旅の理由のひとつだった。

この物語を、あなたのカップで。
西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。


この物語について

本記事は「タンザニア アカシアヒルズ」のスペシャルティコーヒーをもとに、実際の風味・歴史・生産背景から着想を得たフィクションです。コーヒーを通して、アフリカの土地と人と、未来を感じていただければ幸いです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★★

酸味 ★★★

コク ★★★

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:焦がしアーモンド、青リンゴ、シガー、青草

農園データ

生産国タンザニア
標高1,750〜1,950m
品種SL28
精選フリーウォッシュド

コーヒートラベラーNの手記3:『火と水と音楽と ― キニニ村で見つけた四つの元素〜ルワンダ・キニニ 2025年4月限定コーヒー

はじまりは「風のない音楽」

Nがルワンダの地を訪れたのは、乾いた風が高地を吹き抜ける午後だった。遠くにはブンガ山脈の尾根がうっすらと見え、足元の赤土には力強く根を張るコーヒーの木々が並んでいた。

「この国に、かつての面影はあるだろうか?」

かつてジェノサイドによって国が崩壊した1994年。その絶望からわずか30年足らずで、ルワンダはスペシャルティコーヒーの新興国として世界の注目を集めるようになっていた。政府と国際支援団体が手を携え、2000年代に入ってから急速に品質改善とインフラ整備が進み、今や北部・南部・西部の高地では、火山性の肥沃な土壌と標高1800mを超える冷涼な気候のもと、ブルボン系品種が美しく育まれている。

この日、Nが目指していたのはその北部にある小さな村――キニニ。そこには、「火・水・空気・音楽」のすべてを宿すコーヒーがあるという。


火:焼かれることで生まれる「深み」

キニニ村にたどり着いたNは、焙煎士に出会った。農園の隅に小さな焙煎室があり、中では豆が鉄製の焙煎釜の中でリズムよく跳ねていた。

「この焙煎で何を引き出すんですか?」とNが尋ねると、焙煎士はこう答えた。

焼きリンゴのような甘さと、大人のカカオのようなビタネス。深く焼かれてこそ現れる複雑な香り。それがこの豆の“火”です。」

豆の香ばしさが部屋中に漂い、Nは一粒を砕いて香りを嗅いだ。そこには確かに、焦がした甘みと、黒く美しい苦味の片鱗があった。火を入れることで、豆の中の時間が目を覚ます。それはまるで、焼かれることではじめて語り出す物語のようだった。


水:洗い流された記憶の層

キニニ村の中心には、小さな精製所があった。そこではフリーウォッシュドプロセスが行われていた。

チェリーが集荷されるとすぐに果肉除去機にかけられ、発酵槽に沈められる。数時間〜20時間、微生物の働きに任せてミューシレージを分解し、その後何度も清水で洗い流す。

「私たちの豆は、“洗い清める”ことでその本質を取り戻すのよ。」と、発酵槽の管理を担う年配の女性が語った。

Nはその静かな水の中に、ルワンダの歴史が重なって見えた。過去の悲劇、そしてそれを“洗い流し”、“残されたもの”に光を当てていくようなこのプロセスは、まるで国そのものの再生のようだった。

水で磨かれた味は、決して薄まらない。むしろ、輪郭が立つ。

それは、精製槽の中に沈んだ記憶が、味となって浮かび上がるようだった。


空気:風が通る乾燥台、静かに踊る豆

精製された豆は、その後アフリカンベッドと呼ばれる高床式の乾燥台へ運ばれ、天日で約15日間乾かされる。

Nはその乾燥台に立ち、吹き抜ける風を感じていた。豆の下にも空気が通り、昼間は太陽の光を受け、夜は冷たい空気でゆっくりと熱が抜かれていく。

農園の若者たちが手で豆をかき混ぜていく姿は、まるで無音のダンスのようだった。

空気が通らなければ、豆は呼吸できない。乾くだけじゃない、“生き返る”んです。」と、若いスタッフが笑う。

その言葉の通り、ここではただ豆を乾かすのではなく、豆の中の余熱や湿度、香りの層を調律するように扱われていた。まるで風そのものが、コーヒーの風味を編み上げているかのようだった。


音楽:一杯の中で踊り出す味わい

焙煎された豆がカップに落ちた瞬間、Nの鼻孔をふわりと包んだのは、ビタースイートな香りだった。

口に含むと、最初に走るのはビビッドで鮮やかな酸味。だが、それはすぐに旨みに変わる。次に訪れるのは焼きリンゴのような優しい甘さ。そして、100%カカオチョコレートのような濃厚なビター感がゆっくりと舌を包み込む。

「これは…音楽だ。」

Nは思わず声を漏らす。高音のシトラス、ミドルのリンゴ、低音のチョコレート。甘さがリズムを刻み、酸がメロディを作り、ビターがベースを支えている。

まるで、ラテンの音楽を踊るようなコーヒー。

鮮やかで、楽しくて、奥深い。

この国の再生は、まさにこの一杯のようだとNは思った。


西原珈琲店で、ルワンダから届いた四元素を味わってみませんか?

ルワンダの火、ルワンダの水、ルワンダの風、そしてルワンダの音楽。

すべてが溶け合った一杯のコーヒー。

それは、キニニ村で紡がれた復興と希望の味。

この物語を、あなたのカップで。
西原珈琲店にて、ぜひお楽しみください。


この物語について

本記事は「ルワンダ・キニニ村」のスペシャルティコーヒー(Mayaguez 139種、フリーウォッシュド精製)をもとに、実際の風味・歴史・生産背景から着想を得たフィクションです。コーヒーを通して、アフリカの土地と人と、未来を感じていただければ幸いです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★★

コク ★★★

甘味 ★★★

焙煎 ★★☆  

フレーバー:焼きリンゴ、カカオ、メープル、ソーダ

農園データ

生産国ルワンダ
標高1,800〜2,250m
品種ブルボン
精選フリーウォッシュド、アフリカンベッドで100%天日乾燥

コーヒートラベラーNの手記②:『消えゆく幻と静かなる奇跡』〜ジンバブエ クレイク・バレイ 2025年3月限定コーヒー

消えた王国の記憶

Nはジンバブエの大地に降り立った。

かつてこの国は、東アフリカ随一のコーヒー生産国として名を馳せていた。19世紀末に持ち込まれたアラビカ種は、1960年代に産業としての基盤を確立し、1980年代には世界市場で高く評価された。しかし、2000年代の政治的混乱と土地改革により、多くの農園が消え去った。

しかし、今もなお「幻のコーヒー」として生き残る農園があるという。Nがその名を口にする。

クレイク・バレー農園。

ジンバブエの高地にあるこの農園は、奇跡的に荒廃を免れ、いまだに優れたコーヒーを育て続けているという。Nはその真相を確かめるため、赤土の道を歩き始めた。

谷の静寂

霧がかった山々が連なるブンハ山脈。クレイク・バレー農園は、この谷の奥深くにひっそりと存在していた。

Nは農園を見渡した。赤い土壌に根を張るコーヒーの木々、規則正しく並ぶシェードツリー、そして遠くに見えるダム湖の静かな水面。かつての混乱が嘘のように、この場所には穏やかな空気が漂っていた。

農園主が迎えてくれた。

「ようこそ。ここは静かだろう?」

Nは頷いた。

「この土地は嵐を乗り越えてきたのだな。」

農園主は遠くを見つめ、静かに語り始めた。

「国が荒れ、多くの農園が崩れ去った。でも、私たちはこの谷に踏みとどまった。土地を奪われた者もいたが、この農園は奇跡的に守られた。」

コーヒーの奇跡

Nは農園の奥へと案内された。シェードツリーの下でゆっくりと熟すコーヒーチェリー。農夫たちは静かに、しかし丁寧に赤く実ったチェリーを摘み取っていた。

「飲んでみるか?」

農園主が手渡したカップからは、香ばしい豆の香りが立ち昇った。

Nは一口含んだ。

夏の草原を吹き抜ける風のような爽やかさ。メロンのように弾ける感覚。ナッツのような香ばしさと、砕いたばかりの豆のような鮮烈な風味が舌の上で踊る。最後には、深みのあるコクが余韻として残った。

「これは…実にうまい。」

農園主は微笑んだ。

「この谷の気候がゆっくりとチェリーを熟させる。そして、私たちは時間をかけて精製し、天日乾燥で仕上げる。急ぐことは何もない。」

Nはカップを見つめながら、このコーヒーが持つ静かな奇跡を感じていた。

谷の朝

翌朝、Nは農園の丘へと登った。

霧が谷をゆっくりと包み込み、遠くのダム湖が白く霞んでいる。太陽が昇るにつれ、霧は次第に晴れ、赤土の大地が黄金色に輝き始めた。

農園の一角では、農夫たちが静かにチェリーを摘み取っていた。ゆっくりと、しかし確実に。かつて混乱と絶望に沈んだこの土地には、今、穏やかな営みが戻っている。

彼らの手の動き一つ一つが、この谷の未来を紡いでいるようだった。

Nはその光景を目に焼き付けながら、心の中でそっと呟いた。

「この土地の奇跡は、確かにここにある。」

Nの謎

焚き火の前で、農園主がNに尋ねた。

「なぜ君はコーヒーを追い続ける?」

Nは炎を見つめながら、しばし沈黙した。

「…俺は、消えていくものを記録するのが好きなんだ。」

「記録?」

「人々の記憶から消えたものは、なかったことにされる。でも、確かにここにあると証明できるなら、それは違う。」

農園主はじっとNを見つめた。その眼差しの奥には、ただの旅人ではない何かを感じ取った。

Nは少し微笑み、カップを傾けた。

この物語を味わう場所

ジンバブエのコーヒーは、長い眠りから目覚めようとしている。

それは決して過去の遺物ではない。クレイク・バレー農園のように、今も息づく人々の手で丁寧に育てられている。

「消えゆく幻は、まだここにある。」

Nはそう記し、旅を続けた。

あなたも、西原珈琲店でこの物語を味わってみませんか?


この物語について

本記事は「ジンバブエ・クレイク・バレー農園」のコーヒーの特徴や歴史から着想を得て創作されたフィクションです。コーヒーを楽しみながら、幻と奇跡の旅へ思いを馳せてください。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ナッツ、メロン

農園データ

生産国ジンバブエ
標高1200
品種カティモール、ブルボン、ティピカ、SL
精選ウォッシュド