羊飼カルディと魔法の実〜エチオピア イルガチェフ コンガG1(2023年11月)

羊飼いカルディと魔法の実

 西暦850年の話である。エチオピアにカルディという名の羊飼いの青年がいた。もうすぐで日が暮れそうな時間、まだ太陽は低い位置から草原の先端を照らしている。羊達がのそりと歩きながら草を食んでいるのを、カルディは大きなユーカリの大木の根に腰掛けて、目を薄く開けて眺めていた。

羊達の群れを保ち、餌場に移動させ、オオカミから群れを守る、この羊飼の仕事は代々受け継がれていて、100年も以上も前からずっとカルディの家の仕事として続いているのだ。

自分もまた、その連綿と続く同じ紐の1つの結び目でしかない。そんなことを考えながら日が沈む前のひと時をカルディはまどろんでいた。

ふと、カルディは一頭の老羊が見当たらないことに気づいた。立ち上がって辺りを探していると、急に、叫ぶような大きな音がしたので、音があった方へ目をやると、それまで見たこともない鬱蒼とした低木の間で、迷った老羊が奇声を上げて飛び跳ねているではないか。

カルディは走ってその羊のところへ行くと、羊は実に愉快な様子で跳ねている。そして、羊の足元には見たこともない、黒い実が散乱していた。しまった、毒を食べたか。

急ぎその老羊を群れに戻したが、その後も羊は実に元気に飛び跳ねていて、その姿は威勢の良いことこの上ない。あの実は一体なんなんだ。その夜、群れを柵の中に戻した後も、老羊は倒れることも死ぬこともないどころか、いつまでも寝ないのだ。

カルディもその老羊が毒で倒れないか不安な気持ち半分、神秘に惹かれる気持ち半分、外に出て老羊と一緒にずっと朝まで起きていた。

東の地平から太陽が頭を出し始めた。カルディは一目散に、例の低木のところへ走っていった。そして、老羊が食べた実を見つけると、一つ取って、恐る恐る口に運んでみた。その実はほんのりと甘いが、酸っぱく中には固い種があった。カルディは思い切ってその種まで齧ってみた。うん、毒ではなさそうだ、カルディはひとりごちた。

しばらくすると、カルディは、なんだか体の芯に熱がこもって来るのを感じた。そして、昨晩は一睡も寝てないのに、頭が実にすっきりとして視界もくっきりと鮮やかになるのを感じた。

それ以降、カルディはこの魔法の実に魅せられ、彼の退屈だった羊飼の日常は、大きく変わった。羊達と踊り、歌う刺激的な日々が始まったのだ。

ある時、カルディはこの実を修道院へ持って行った。修道士は、カルディの実の話を聞いて、その実を手に取り、これは禁断の実に違いないと、すぐにそれを修道院の庭にある火鉢の中で全て放り込んだのだ。カルディはあっ、と叫んだ。

すると、驚いたことに、その火の中からはそれまで誰も嗅いだこともない甘く芳醇な香りが流れてきて、しばらくの間、修道院全体をその香りが包んだのだった。修道士達は誰もが、その香りに包まれて自然と笑みが溢れたという。

⚫︎

 この話は、コーヒー発祥の地エチオピアに伝わる羊飼いカルディのコーヒー発見の伝説を筆者が脚色したものです。エチオピアにはこのようなコーヒー発祥の伝説が幾つもあるのです。

コーヒー発祥の地

 アフリカ大陸北東に位置するエチオピア。首都は標高2,400mのアディスアベバで、エリトリアやジブチ、ソマリア、ケニアを含む周辺地域の形から「アフリカの角」と呼ばれています。人口は約1億1,787万人で、アフリカではナイジェリアに次ぐ人口規模です。オロモ人、アムハラ人、ティグライ人、ソマリ人といった約80の民族からなる多民族国家で、公用語にアムハラ語、オロモ語、英語などが使われています。

コーヒーの原生品種である「アラビカ種」の発祥地と呼ばれており、コーヒーはエチオピアではじめて発見され、アフリカ大陸から世界へ広がっていきました。エチオピア南西部のカファ地方で、世界で初めてアラビカ種が発見されたことから、カファの名がコーヒーの語源になったという説があります。

エチオピア・モカ

 エチオピアと海を挟んだ中東イエメンのコーヒー豆は「モカ」と呼ばれます。この由来は、イエメンの港・モカ港です。かつては、エチオピア産コーヒーは、イエメンのコーヒーと共に、モカ港から輸出されていました。モカの詳しい呼び名としては、エチオピアコーヒーは「エチオピア・モカ」「モカ・ハラー」と呼ばれ、イエメンコーヒーを「モカ・マタリ」と呼ばれています。

⚫︎

 今回のコーヒーは、エチオピアの原生品種のコーヒーです。標高は実に2,500mにあるイルガチェフ村にその農園があります。村に近いアバヤ湖は、エチオピアが有する名湖の一つです。川、森、湖、そして高い標高、火山灰土壌、という恵まれた条件がイルガチェフのコーヒーを特別なものとしています。

エチオピアのコーヒーはナチュラル精製が主流ですが、イルガチェフェは伝統的な水洗処理、天日乾燥により仕上げられています。その中でも選りすぐられた トップグレードが、今回のコーヒーであるイルガチェフェ・G1です。

口の中でスパークする

 一口飲めば、このコーヒーが他のものと一線を画すものであることがわかります。口の中で炸裂する柑橘の酸味、そしてダークチョコレートの甘味、一気にスパークしたかと思った瞬間、まるで魔法のようにそれは姿を消してしまいます。雑味も渋みも苦味も残さず、しかし、深く、クリーンなコクが余韻として残るのです。

エチオピアのイルガチェフは、当店でもお届けするのは、10年ぶりとなります。是非この機会にご賞味ください。

苦味 ★☆☆

酸味 ★★★

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:グレープフルーツ、ベリー、カカオ

農園データ

生産国エチオピア
生産地域イルガチェフ
生産高度2,500m
精選方法ウォッシュド
品種エチオピア原生種

ゲシャビレッジ 始まりのコーヒー

桜が各地で咲き誇っています。例年、桜の満開とともに雨が降り出し、ただでさえ僅かな満開シーズンが、あっという間に終わってしまう印象でしたが、今年は長く楽しめますね。

4月1日には新たな元号も公表されました。平成という時代がいよいよ終わり、新しい時代の幕開けです。

令和

日本最古の歌集「万葉集」の「梅花(うめのはな)の歌三十二首」。日本の古典に由来する元号は初めてのようです。

初春の月(れいげつ)にして、気淑(よ)く風ぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫す

令月とはめでたい月という意味のようで、春の夜にうかぶ満月のことでしょうか。春の満月を眺めると、肌に柔らかい風があたる。そんな春の情景でしょうか。

4月のコーヒーはエチオピア「ゲシャビレッジ」です。

前回のエチオピアコーヒー記事はこちら。

農園主

二人は農園主の写真です。二人はエチオピアコーヒーに魅せられ、

米国からエチオピアに移住し、ゼロからコーヒーを生産を始めました。

理想の環境条件を探したうえに、出会ったのがゲシャ村でした。

 

6年の歳月を経て、たどり着いた高品質のコーヒー、それがこの「ゲシャビレッジ」です。

コーヒー品種として有名なゲイシャ種、その原種が生まれた地です。

香りが伸びやかに広がります。

バランスよく、コクは豊かで、後味はクリーン

酸味がビビッドですが、甘みもありとても爽やかです。

若々しさと華やかさを兼ねそろえた、これからがとても楽しみなコーヒーです。

 

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

焙煎 ★☆☆

 

西原珈琲店の世界のコーヒー 2月「エチオピアサンイルガG1」


西原珈琲店の世界のコーヒー2月の限定コーヒーは、

『エチオピアサンイルガG1』です。

東アフリカはエチオピアからのコーヒー豆です。

エチオピアコーヒー

 

まずは豆を見てみましょう。

エチオピアイルガチャフの特徴といえる形のきれいな小粒の身です。

エチオピアコーヒー

 

その香りは、イルガチャフ独特の、少しくせのある、しかし、豆の深みを感じさせる香りです。

 

味をみてみましょう。まず、感じるのはその、深いこくです。

そして心地よい苦味の奥に、やさしい甘味と、柔らかい酸味が漂います。

 

コーヒー発祥の地、エチオピア。

 

中でも逸品と名高いイルガチャフコーヒーでしか味わえない、独特の香りと、深いコク。

まるで時代に彩られるアンティークのような深みを感じさせてくれるコーヒーです。

是非、この機会にご賞味ください。

 

———珈琲豆いろは———

エチオピアはご存知コーヒー発祥の地です。

「モカ」という名もエチオピアコーヒーに名づけられたものです。

サンイルガG1ナチュラルは、近隣農家より手摘み収穫されてから、

数時間以内のコーヒーチェリーを、品質にこだわる現地の

エキスポーターである「MOPLACO TRADING」社指定で直接買い付け、

最上級規格であるグレード1まで丁寧に仕上げたコーヒーです。