ニカラグア「エルススピロ オレンジブルボン」:語らない紳士の鮮やかな主張とは〜2024年9月限定コーヒー

中米の宝石、ニカラグアコーヒーの歴史

 18世紀、フランスの宣教師たちによってカリブ海地域に持ち込まれたコーヒーは、やがてニカラグアにも伝わり、その肥沃な大地で栽培が始まりました。ニカラグアでのコーヒー栽培が本格化したのは19世紀半ばで、当初はスペイン人やクレオール(スペイン人と現地人の混血)による小規模な栽培が主でした。19世紀後半には、ヨーロッパでのコーヒー需要の高まりに伴い、ニカラグアのコーヒー産業も拡大を続け、輸出品としての地位を確立しました。

20世紀には、政治的混乱や内戦、自然災害など多くの試練に直面しましたが、21世紀に入ると、品質向上と持続可能な農業への取り組みによって、再び世界市場で注目を集めるようになりました。現在では、スペシャルティコーヒーとしての評価も高まり、多くの農家が国際的に認められるコーヒーを生産しています。

ニカラグアコーヒーと人々の暮らし

 ニカラグアの人々にとって、コーヒーは単なる飲み物を超えた存在です。朝の始まりや仕事中の休憩、家族や友人との語らいの場でも、コーヒーは常にそばにあります。コーヒーは彼らの日常生活に深く根ざし、文化の一部として愛されています。

コーヒー栽培は、多くの小規模農家にとって主要な収入源であり、地域経済を支える重要な産業です。コーヒー農園は単なる生産の場を超え、地域コミュニティの核となる存在です。収穫期には家族や友人が協力して収穫作業を行い、コーヒーを媒介にした助け合いや情報交換が行われ、コミュニティ意識が育まれています。

ニカラグアの火山

ニカラグアの自然が育む、多様なコーヒー

 ニカラグアは、多様な地形と気候に恵まれた国です。太平洋とカリブ海の間に位置し、高地から低地まで様々な標高でコーヒーが栽培されています。主にアラビカ種が栽培されており、その豊かな風味は国際的に評価されています。中でもオレンジブルボンは、柑橘系の爽やかな酸味とフルーティーな風味が特徴で、スペシャルティコーヒーとして高い評価を受けています。

オレンジブルボン:ニカラグアコーヒーを代表する品種

 オレンジブルボンは、ブルボン種の変異種で、明るいオレンジ色の果実が特徴です。この品種は、柑橘系の酸味と華やかな香りがあり、オレンジやグレープフルーツを思わせるフルーティーなニュアンスが魅力です。ニカラグアの豊かな火山性土壌と高地の気候は、オレンジブルボンの栽培に非常に適しており、その品質は世界中のコーヒー愛好家から高く評価されています。

ニカラグアコーヒーの産地探訪

 ニカラグアには、多様な気候と土壌に恵まれた複数のコーヒー産地があります。それぞれの地域が独自の風味を持つコーヒーを生み出しています。

  • マタガルパ地区: ニカラグアを代表するコーヒー生産地の一つで、高地で栽培されるコーヒーは豊かな酸味と複雑な風味が特徴です。
  • マサヤ地区: 火山灰が堆積した肥沃な土壌で栽培されるコーヒーは、しっかりとしたコクとボディが特徴です。
  • ヌエバセゴビア地区: 高地と昼夜の寒暖差が大きい環境で栽培されるコーヒーは、繊細な風味と香りが特徴的です。

マタガルパ地区を深掘り:オレンジブルボンの栽培

 マタガルパ地区は、ニカラグアの中でも特に高品質なコーヒーを生産する地域として知られています。高地特有の気候条件、すなわち昼夜の寒暖差や火山性の肥沃な土壌は、コーヒーの糖度を高め、複雑な風味を生み出すのに適しています。地元の農家は、伝統的な栽培方法と最新の技術を融合させ、オレンジブルボンをはじめとする高品質なコーヒーを生産しています。

ニカラグアコーヒーの未来

 ニカラグアコーヒーは、今後も世界中のコーヒー愛好家を魅了し続けるでしょう。環境に配慮した栽培方法の導入や、フェアトレードの推進など、持続可能なコーヒー生産への取り組みが進展しています。オレンジブルボン以外にも、新たな品種の開発や既存品種の改良が進められており、ニカラグアコーヒーの未来は明るいといえます。

ニカラグアコーヒーの魅力

 ニカラグアコーヒーは、その歴史、文化、そして人々の情熱が詰まった「一杯の物語」といえます。豊かな自然環境の中で育まれたコーヒー豆は、味わい深く、多くの人々の生活と文化を彩ります。ニカラグアコーヒーの魅力は、これからも世界中のコーヒー愛好家の心を捉え続けるでしょう。

味について

香りは深煎りしたほうじ茶の香ばしさとオレンジの爽やかさ。

深煎りの豆の味は、旅先のホテルの朝食で、テーブルの真っ白なカップに注いでもらった淹れたてのコーヒーをお腹に何も入っていない状態で飲んだ時のような奥行きのある、それでいて穏やかな苦味に包まれます。柑橘のほのかな酸味が静かに、そして、余韻にはアールグレイの甘みがふわりと

主張はしないのに存在感がある、まるで黙っているのにそこにいるだけで雄弁に鮮やかに語る紳士の佇まいように

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★★  

フレーバー:オレンジ、ほうじ茶、シガー

農園データ

生産国ニカラグア
標高1350〜1450
品種オレンジブルボン
精選フリーウォッシュド、パルプドナチュラル

その名はリラ〜ニカラグアサンタアナ農園(2023年3月)

中米最大の国、ニカラグア

 ニカラグアは中米の中心にあり、北はホンジュラス、南はコスタリカに挟まれています。人口は600万人、国土は13万㎢で中米の中ではもっとも国土面積が広く、農業がさかんな国です。コーヒーの産地は北部山岳地帯を中心に広がっています。

 ニカラグアは19世紀の半ばにコーヒーがもたらされると、コーヒーは産業の中心となり、国の経済を支えてきました。また、96%程度のコーヒー農園は原生するシェードツリーに覆われており、ニカラグアの中で生態系や土壌・水源を保安する役割を担っています。

 ヒノテガ県はニカラグア北部に位置するコーヒーの生産の中心地で、豊かな火山性の土壌と、広大な貯水池であるアパナス湖を擁する標高が高く自然豊かなエリアです。

 火山とコーヒー豆の切っても切れない関係はこちらの記事に詳しいです。

農園主リラ、30年をかけて

 サンタアナ農園はこのヒノテガ地区に位置する、90年以上の歴史を持つ伝統ある農園です。農園内には小川が流れ、多くの動物や昆虫たちが生息するなど、自然豊かな環境を有しており、レインフォレスト・アライアンスなど、サステイナブル認証も取得しております。

 3代目である女性農園主のリラは、農園内の母屋で生まれ育ち、父親からこの農園を受け継いでから30年以上、高品質コーヒーの栽培に取り組んできました。100%手摘みの原料はその熟度にもこだわり、精選工程の中でも完熟割合を高めるべく取り組んでいます。完熟したチェリーは、その果実の甘みを豆に浸透するのです。

 完熟チェリーについてはこちらの記事が詳しいです。

完熟チェリーが落ちてくる

 最初口に含むと甘酸っぱさが表れます。そして、しっかりとしたコクがその後に伸びていきます。余韻はすっと消えていき、ふくよかな口当たりだけが残されます。

 完熟チェリー由来の甘みと酸味、雑味は全く感じられなく、とても飲みやすいのに、深いコクも楽しめる一級品です。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:濡れた木、ベリー

農園データ

所在地ヒノテガ県ラ・フンダドーラ地区
標高約1,200m
平均降雨量2,500mm/年
開花期3〜5月
収穫期10〜12月
面積約104ha
生産量約2,570袋
栽培品種カトゥーラ、ビジャサルチ等

ニカラグアのアフリカンベッド

2020年2月の限定コーヒーはニカラグアから「ぺラルタ農園ナチュラル」です。

ニカラグアのコーヒー主要生産地である、ディピルト/ハラパ山脈地帯にて、伝統農家であるぺラルタ農園で作られました。

カツーラ、ブルボン、カツアイ、ビジャサルチ、ティピカといった、複数の品種をアフリカンベッドでじっくりと乾燥させたナチュラル精選のコーヒーです。

アフリカンベッドについて

前回のニカラグアコーヒー

ハーブ、ミントのフレーバーにしっかりと酸味が広がります。

その後隠れたビターがあらわれてきて、

最後、余韻にはシガーの落ち着き

特徴あるコーヒーで、アイスにしても楽しいですね。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★★

コク ★☆☆

焙煎 ★☆☆

香り ハーブ、ミント、シガー

「カサ ブランカ ラコパ」西原珈琲店の世界のコーヒー6月の限定コーヒー


西原珈琲店の世界のコーヒー6月の限定コーヒーは、

『カサ ブランカ ラコパ』です。

中米はニカラグア共和国からのコーヒー豆です。

こちらはちょうど一年前にも同農園のバレンシアをご紹介しました。

ニカラグアカサブランカ豆全体

カサブランカ農園は、ニカラグアの北西部ホンジュラスとの国境に近い、

崖と谷が入り組んだ山岳地帯に位置します。

農園は標高1,200メートル。

農園内は自然林とシェードツリーがよく茂り、多くの小動物も共生する

豊かな自然に恵まれた農園です。

ニカラグアカサブランカ豆フォーカス

さて、豆を見てみましょう。
中くらいのサイズ、丸みはきれいで、テキスチャー(表面)もなめらかで美しいです。

皆様はコーヒー豆でご自宅用にご購入されたことはありますでしょうか?

グラインド(豆挽き)前に、是非、豆そのものをご鑑賞されることをおすすめします。

豆の形、色(ロースト具合)、全体バランス、テキスチャ、美味しいコーヒーは、ドリップ、ローストも当然ながら大切ですが、何より豆自体の品質の高さが前提となります。

ストレートコーヒーであれば、豆の形、色合い、大きさがそろっていること、そしてキズ、傷みがないこと、これらの基本がコーヒー本来の味を作ります。

さて、その香りは柔らかく、ほんのりと薫るローストが心地よいです。

舌に触れる味はすっきりとした酸味、渋さ、そして、じんわり広がるコクとまろやかさ。

これからの夏を感じる爽やかな風味を楽しめます。

 

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

『ニカラグア リモンシリョ ジャバニカ』西原珈琲店の世界のコーヒー1月限定コーヒー


皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年最初のコーヒーのご紹介です。西原珈琲店の世界のコーヒー1月の限定コーヒーは、

『ニカラグア リモンシリョ ジャバニカ』です。

ニカラグア共和国からのコーヒーです。

ニカラグアコーヒー豆写真1

ニカラグアは、中米、ホンジュラスとコスタリカに挟まれた場所にあります。

ニカラグア地図

旅行のとも、ZenTech様参照

人口は608万人、国土は北海道と九州を合わせたくらいの広さです。

主要産業は農牧業で、コーヒーや牛肉などを輸出しています。

さて、豆を見てみましょう。

ニカラグアコーヒー豆写真2
大きさは小ぶりで、細長の形をしています。

こちらのコーヒーはは「ジャバニカ」単一品種です。

東インド会社の時代、オランダ人がインドネシアのジャワ島にエチオピア原産のロングベリーコーヒーを移植しました。

このジャバ島で育ったコーヒーがジャバという品種です。

このジャバ品種がニカラグアにもたらされ、「ジャバニカ」と呼ばれるようになりました。

エチオピア起源の原種に近いコーヒー品種と言え、栽培には大変な手間がかかります。

さっそく、コーヒーの「オリジナル」といえるジャバニカを味わってみましょう。

芳醇なアロマが漂います。

舌に触れるその味は、酸味がとても強いのが印象的です。

その酸味は甘みと共存しており、果実のような風味を楽しめます。

 

コクと苦味もしっかりと感じられ深い味わいが余韻に残ります。

このような際立った個性こそ、ストレートコーヒーの楽しみですね。

 

酸味に特徴があるため、レモンを含んだチーズケーキですとその個性がかき消されてしまいますので、

生クリームのロールケーキやシフォンケーキをお供にされることをおすすめいたします。

 

是非、こちらの希少コーヒーをお楽しみください。

リモンシリョ農園の「リモン」は「レモン」の意味です。農園がたくさんのレモンの木に囲まれていることに由来しています。

コーヒーのシェードツリー(コーヒーの木に日陰を作る役割の木)に柑橘系の木があると、そのコーヒーはフルーティな風味、柑橘のアロマを持ちます。

こちらのコーヒーの強い酸味には、リモンシリョ農園を囲むレモンの木のアロマが宿っているのかもしれません。